ネガティブな状況を示すデータこそ、ビジネスのタネになるかも
博報堂生活総研の「生活定点」調査を
昨日紹介したが、今日も続けたい。
今年「過去最高」を更新した項目と、
今年「過去最低」を更新した項目とで、
聴取開始時点との差、即ち30年間で
どれだけ差が付いたかが分かる趣向と
なっている旨を紹介した。
昨日取り上げた、携帯電話が自分の
生活にとって必要不可欠だという話は、
前者の「過去最高」更新項目。
今日は、「過去最低」更新項目の方で
気になったことを取り上げてみたい。
調査開始から丁度30年ということだが、
最近は「失われた30年」と言われる
ことも多いのは周知の事実。
つまり、調査開始から一貫して、我らが
日本経済は右下がり、または低空飛行の
一途を辿ってきたということだ。
その意味で、「過去最低」更新項目は、
この「失われた30年」をより端的に象徴
する内容だと言っても差し支えないと
言えるだろう。
実際、以下はそのものズバリだ。
「経済的繁栄は日本の誇りだと思う」
という質問を肯定する人は、30年前に
45.4%いたのが、今年はわずか10.3%
にまで下がっている。
尻すぼみの経済を追いかけるように、
人々の気力、情熱、アグレッシブさも
失われつつある気がしてならない。
「友人は多ければ多いほど良い」
と考える人は、57.2%から15.4%へと
明らかに激減している。
もちろん、価値観の多様化と言えば
それまでだが、内向きな人が相当増えた
と解釈した方がリアルだろう。
「いくつになっても恋愛していたい」
と考える人も、49.9%から27.0%へと
ほぼ半減している。
少子高齢化が進んでいるというニュースが
散々流れているので、今さら驚くことでは
ないのだが、生活者の意識レベルで改めて
裏付けされると、なんだか忍びない。
こうやって見ていくと、ついつい暗い
気持ちに陥りかねないわけだが、
逆にこれらのネガティブに見える状況を
示唆するデータは、それをポジティブに
変えてあげる「ソリューション」を開発
するヒントだと言えなくもない。
「いくつになっても恋愛していたい」
人が減っているのはなぜか?
博報堂総研のレポートでは、
「幸せを感じることが恋愛以外にも多様化
した時代性を映しだしている」可能性が
示唆されている。
私もその指摘には大いに首肯するところ。
これだけ世の中に様々な娯楽があふれる中、
恋愛しなくても十分に没頭し、満たされる
だけの対象を見い出すのは容易なのだ。
恋愛はむしろ面倒なこととして、敬遠する
向きがあるというのも理解できる。
そのような状況において、そうは言っても
恋愛したい人だってまだまだ多いはず!
と考え、世の中に恋愛を増やす方向での
事業開発を考えることも出来るだろう。
逆に、今の流れを踏まえて、恋愛絡みの
事業には明るい未来がないと判断し、
恋愛以上にみんなが没頭していることは
何か?という問いを立てて事業のタネを
探しても良い。
いずれにしても、今の生活者がどんな
インサイトを持っているかを理解して
おくことは、何かとマーケティングの
実践において役に立つ。
「お宝」のような資料を読み込みながら、
様々な自問自答を楽しみたい。