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ニーズ、ウォンツ、ディマンド

六法全書というのは、法律の基本と
なる六つの法律をはじめとする
主要な法律を収めた書物。
法学部の学生にとっては、
当然ながら必須アイテム。
何かにつけて、六法全書をひきひき、
様々な条文とにらめっこする。

私も法学部出身なので、六法全書には
お世話になった。
とにかく、迷ったら条文に帰れ、
という趣旨のことはよく言われたし、
様々な用語の定義も条文に書かれて
いたので、まずは六法を見に行く
ことが多い。
学んだ知識はすっかりどこかへ飛んで
しまっても、「基本に帰る」姿勢
くらいは身に付いたのではないか、
そんな風に思うこともある。

マーケティングの基本中の基本とも
言える用語で、
「ニーズ」
「ウォンツ」
というものがある。
「ニーズ・ウォンツ」という風に
ひとくくりに扱うことも多い。

ふと、この二つの違いって何だっけ?
というのが気になり、念のため正確を
期すべく教科書を引っ張り出してきた。
以前にも紹介した、
「マーケティングの神様」

ことフィリップ・コトラー先生の
基本書である。  

冒頭に近いページにいきなりこれらの
単語は出て来る。
先生によれば、「ニーズ」とは、

欠乏を感じている状態

だという。

衣食住などの生理的ニーズ。
愛情や帰属を求めるような
社会的ニーズ。
知識や自己表現といった
個人的ニーズ。
いずれも、
「満たしたい!」
でも
「満たされてない!」
という状態にある、
「人間の根源的な欲望」
と言ってもいいのかもしれない。

他方、「ウォンツ」とは、
日本語訳として「欲求」が
充てられており、

人のニーズが具体化したもの
ニーズを満たす特定の対象のこと

であるという。

例えば、食べ物のニーズが
具体化して、
「ハンバーガーが食べたい」
「コカ・コーラが飲みたい」
という形になったもの。
それが「ウォンツ」なのだ。

更に、この「ウォンツ」に
消費者側の財源が付くと、
「ディマンド」=「需要」
に変化する。
この「ディマンド」という言葉は、
前二者に比べると使用頻度が
一般的にはかなり少ないと
思われるが、マーケティングの
現場ではよく使われている言葉
である。
今日も、
「ディマンド・フォーキャスト」
つまり需要予測についての
打ち合わせをしたばかり。

こんな風に、定義を確認しておくと
何か良いことがあるのか、疑問に
思う向きもあるかもしれない。
良いことは当然ある。
厳密な定義を確認することで
議論の精度が上がる。
細かな違いを見分ける感覚を
養うことは、分析力や論理力を
鍛えることにもつながるだろう。

プロフェッショナルとは、自分の
専門分野で使う言葉を全て厳密に
定義できる人である、そんな風に
考えている。
なので、自分もプロを標榜する
からには、一通りの定義は
自由自在に操れなければならぬ、
そんな思いがあるのだ。

そしてまた、プロであるならば、
たとえ忘れたとしてもすぐに
思い出す、どこかから引っ張り
出してこれる、常にそういった
「スキのなさ」
を持っている必要がある。
そのように思うのだ。

最後に、ニーズとウォンツの話に
戻るが、洋楽のラブソングに、
" I need you"
" I want you"
というフレーズがよく併用されて
いるのを思い出した。
これまでほとんど意味の違いを
考えたことなどなかったが、
先の定義の違いを当てはめると
色々深い解釈が楽しめて、
なかなか興味深いかもしれない。



己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。