「情報」と「情緒」の違い
月が替わって2月になりました。
ということで、また新たに購読中の
月刊誌『致知』が送られてきます。
1月初めに届いた2月号が、
また全部読み切れていないことに
焦りを感じ、机の上で他の本の中に
埋もれていた雑誌をすくい出して、
昨日読んでおりました。
今回の特集は、
「二〇五〇年の日本を考える」
というもので、寄稿している、
あるいは対談企画に出ている
論者の皆様が、いつにも増して
錚々たる顔ぶれです。
「日本の技術に未来はあるか」と題し、
東京大学名誉教授の月尾嘉男先生と、
国産OSとして名高い「TRON」の開発者
である坂村健先生が対談をしている
記事が非常に興味深く、取り上げる
ことにしました。
トロンとは何か、ご存知の方も多いと
思いますが、念のため簡単に説明を
加えましょう。
これを一言で表すとすれば、
世界に認められた国産の「OS」
ということになりますね。
OSなので、Windowsなどと同様に、
電子機器の中に組み込まれて色々と
重要な処理を行い、その機器を稼働
させることに貢献する技術です。
記事を見て驚いたのですが、
「組み込み型のOS」としての
世界シェアが、何と60%ほどにも
なっているとのこと。
ここに至る道のりは平坦ではなかった
ものの、国際的に高い評価を得て、
実際にそれだけのシェアを得られた
大きな理由の一つは、その技術を
特許などで囲い込まずにオープンに
して、誰でも使えるようにした点に
あるようです。
特許で囲い込むことは、もちろん
法律上認められていることですし、
それによって技術開発競争が激しく
行われ、社会全体にとってプラスに
作用することは否めません。
しかし、少なくともトロンの場合、
結果的に多くの人が実際に使ってくれ、
フィードバックを寄せてくれたことで、
その内容が発展し、普及の後押しをして
くれたのですね。
オープンソースというと、
「Linux」の名前を思い出す人も多い
かもしれません。
これに加え、データベースの世界で
有名な「MySQL」というのも、
オープンソースで成功している代表的な
プロジェクトだと言われています。
一般論として、オープンソースに
してしまうと収益化が難しくなると
言われているそうですが、
坂村さんはずっとオープンで押し通した
ところが素晴らしいところですね。
情報量が非常に多い記事だったので、
他にも色々紹介したいことはあるの
ですが、最も気に入った箇所を是非
取り上げさせてください。
それが、タイトルにも挙げた内容で、
坂村さんが「情報」と「情緒」の違いを
語ったところなのです。
この「情緒社会」を目指すべきという
考え方、とても素敵だと思いませんか?
このような発想ができる方だからこそ、
オープンで押し通すやり方でトロンを
成功に導き、現在進行形で今の社会に
多大なる貢献をなすことができたのだと
思わずにはいられません。
企業経営ないしマーケティングでは、
つい「希少性」をテコにして販売促進を
押し進めるような視点の方に偏りがち
ではないでしょうか。
この「情緒社会」を目指すという視点を
常に頭の中に入れて、仕事に取り組んで
いきたいものですね。