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量が質に転化する

TVCMの好感度調査を、30年以上も
ひたすらコツコツと続けて来た、
CM総合研究所(東京企画)という
会社がある。
以前にもここで話題として取り上げた
ことがある。

毎月、3000人もの視聴者の方から
ヒアリング調査を続け、そのデータの
蓄積によって様々な知見を獲得し、
事業に活かしている。
先週、そのCM総研から、2021年の
「BRAND OF THE YEAR」が発表された。

詳細は上記サイトにある通りだが、
そこから「銘柄別CM好感度トップ10」
引用させてもらう。

1位 KDDI『au』 「三太郎シリーズ:5G・桃姫登場」篇
2位 ソフトバンク『SoftBank』 「白戸家:5Gってドラえもん?・ドラミ登場」篇
3位 NTTドコモ『NTT DOCOMO』 「あなたと世界を変えていく。」篇
4位 ソフトバンク『ワイモバイル』 「Y!でいいのだ・ハジメちゃん登場」篇
5位 楽天モバイル『楽天モバイル』 「Rakuten UN-LIMIT Ⅴスタート」篇
6位 KDDI『UQ』 「UQUEEN 懇願」篇
7位 Uber Eats Japan『Uber Eats』 松嶋菜々子とMatt 「今夜、私が頂くのは…」メイクアップ篇
8位 ユニクロ『UNIQLO』 「21FW LifeとWear/Mジーンズ地下鉄」篇
9位 出前館『出前館』 「Demae-canの歌」篇
10位 AGC『ブランディングCM』 「AではじまりCでおわる素材の会社はAGC」篇

この顔ぶれを見て真っ先に気付くのは、
上位を携帯電話キャリアが独占している
こと。
1位から6位まで、見事に揃い踏みである。
しかも、1位から3位が御三家、そして
4位から6位が御三家に続く格安キャリア
たちとなっている。

なぜこういうことになるのか。
それを知るには、そもそも
「CM好感度」なる指標の成り立ち
確認しておく必要がある。

ここにある通り、「純粋想起」
つまり誰にも邪魔されず、自分が
パッと思い出せるブランドを回答
する調査方式をとっている。
となると、投下量の多いCMが断然
有利
になることは容易に想像できる
ところ。

CMの投下量が多いブランドは、
必然的に事業規模が大きかったり、
利益率が高いので予算規模も大きく
できるところに限られてくる。
そういうところは、CMの制作自体
にもお金をかけられることが多いので、
制作陣に著名な方々を起用したり、
出演者にセレブを起用したりといった
こともやりやすい環境にある。

結局、何度も同じCMを視聴するうちに、
好き嫌い関係なく「想起」されやすく
なる。
そして、「想起」できる位に何度も
接触のあったブランドやCMには、
ほぼ確実に親近感が生まれる
ものなのだ。

たとえ「嫌い」であっても、接触頻度が
多いと「好き」になってしまう。
これを、心理学では「単純接触効果」
あるいは「ザイオンス効果」と呼ぶが、
上記ランキングは正にこの効果の成せる
業ではないか、そう感じさせられた。
「量が質に転化する」とは正にこのこと
ではなかろうか。

結局のところ、今年流れたCMで、
量に影響される部分を除いた場合、
質の高いものは何だったのか?
それを知りたい場合は、彼らが発表した
もう一つの賞
「消費者を動かしたCM展開 特別賞」
の方を見るべきだろう。

「業績向上」に貢献のあったCMとして
130銘柄が選ばれ、そのうち特に優れた
17銘柄が表彰されている。
認知獲得、興味喚起にとどまらず、
しっかり売上や利益に貢献した点が
素晴らしい。

先のトップ10とダブル受賞したのが、
・Uber Eats
・出前館
・AGC

の3つ。
実質的にはこれら3つが、
今年最も優秀なTVCMであったと
評価可能かもしれない。
この3つの中に、携帯電話キャリアが
一つも入らなかったという事実は、
どう解釈すべきか悩むところである。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。