会社員から経営者へのキャリアチェンジ
土曜日の夜、外国人観光客でごった返す
銀座に出かけ、学生時代に所属していた
サークルのOB会に出席した。
創立されてから66年の月日が経ち、
私は丁度真ん中あたりの年次。
参加される先輩方は、既に引退されて
いる方も多い。
とはいえ、わざわざ会場に足を運んで
くださるだけあって、皆さんお元気で
社交的。
某メーカー勤務だった先輩と話して
いたところ、最後に子会社の社長を
経験したとのことだったので、
つい興味を惹かれて色々質問をして
いった。
理系畑の方で、工場まわりのお仕事
内容が多かったというその先輩が、
子会社とはいえいきなり経営者に
なったとしたら、やるべき仕事が
ガラッと変わるに違いない。
その予想はやはり当たっていたらしく、
なかなか大変だったと教えてくれた。
若い頃は、とにかく目の前の仕事を
こなしていく。
少しずつ年次が上がるにつれて、
自分の前後のレイヤー、つまりは
直接の上司と部下のことまで十分に
視界、視野に入ってくるようになる。
中堅を過ぎると、更にもうひとつ上の
レイヤーまで視野に収まるように
なった。
部を一つ任されるようになって、
かなり広い範囲を見るようになった。
しかし、そこから子会社の社長として
立場が変わった時に、自分は圧倒的に
学びが足りない、そんなことを感じた
そうなのだ。
部のマネジメントと、
会社のマネジメントでは、
根本的に質が違う。
社員としてどう振る舞えばよいのかは、
上司やそのまた上司を見ていれば、
自ずと学ぶことができた。
社長としてどう振る舞えばよいのかは、
同じ会社にロールモデルがいないので、
どうにも学びようがなくて、困って
しまったというのである。
やはり、社長とそれ以外とでは、
仕事の質に大いなる断絶があるのは
紛れもない事実。
営業であれ人事であれ経理財務であれ、
自分の専門分野を持って仕事をしてきた
人であればなおのこと、「経営」という
総合的な営みは、大きなチャレンジと
なることだろう。
その先輩は、そこでキャリアを終えて
引退されたようだったが、
そのチャレンジで高い業績をあげて
「経営者」としての頭角を表せれば、
本社の経営の一角を担うようになる、
そんな仕組みなのだろうと推察される。
以前に紹介した日立製作所や旭硝子も、
子会社などで経営者を経験させて、
その中から抜擢人事を行う例として
挙げられる。
会社経営ではなく、あくまでも
部門経営になってしまうが、
京セラの「アメーバ経営」は、
日々の実務がそのまま経営者育成に
つながる方法論だと言えなくもない。
ただ、先に書いた通り、
部の経営と会社の経営とでは、
根本的に質が異なるきらいがあり、
やはり独立した一つの会社を率いる
経験があってこそ、経営者としての
経験値を効果的に上げることが可能
なのだろう。