2024年 世界の消費者トレンド その2 「一瞬の気晴らし」
ユーロモニター社が発表した、
「2024年 世界の消費者トレンド」
6つを順に取り上げて、少しばかり
その内容について議論している。
今回は、その2回目。
まずは、同社の日本語記事から引用する。
これだけだと具体例がないので、
一体どんなことを指しているのか、
今一つイメージするのが難しいかも
しれない。
コロナ禍の3年を経て落ち着くかと思いきや、
次はウクライナに始まる大規模な戦争、
それに続く様々な不穏な動きも相まって、
人々の心には暗い影が落ちている。
だからこそ、人々はちょっとした楽しみ、
気晴らしを求めている。
明るい気分になりたがっている。
バブルの時のような大騒ぎではなく、
ちょっとしたもので良いのだ。
商品が消費者にもたらす価値を、
「ベネフィット」とか「|便益《べんえき》」と呼ぶ。
より分かりやすく言い換えれば、
消費者にとっての「嬉しさ」だ。
この「ベネフィット」は、
「機能的ベネフィット」と
「情緒的ベネフィット」とに
分けられる。
例えば、車という商品は、
「移動する」という機能的な価値、
ベネフィットをもたらしてくれる。
同時に、特に高級車の場合などは、
所有するだけで「気分が上がる」とか、
「人に自慢できる」といった側面も
あるのは理解できるだろう。
それこそが正に、情緒的な価値、
ベネフィットである。
来年のトレンド「一瞬の気晴らし」は、
この「情緒的ベネフィット」を
もたらしてくれるような商品がより
全面に出て来るということなのだろう。
英語の解説の中では、具体例として
イタリアの車メーカー・FIATの事例が
紹介されていた。
FIATは、グレーのボディーカラーを
廃止して、イタリア発のブランドと
してのアイデンティティを表現する
カラフルなカラーリングに集中すると
発表したらしい。
それによって、FIATを乗り回すことが、
ちょっとした楽しみや、高揚感を
もたらしてくれる、そんなイメージを
消費者に与えるブランド体験を強化
しようとしている。
もう一つの例として、イギリスの
ディズニーが提供する、複数の感覚に
働きかける「没入感」の体験をウリに
したイベントも紹介されていた。
日本では、チームラボが提供している
様々な体験型アートがこれに相当する
と言って良いだろう。
以前から「これからは体験型が来る!」と
言われ続けて、実際にチームラボなどの
大ヒットがそれを裏付けてきた。
そのムーブメントが世界的により一層
盛り上がっていくのが2024年になる、
ということなのかもしれない。
つい先月、Meta社の「クエスト3」が
発売された。
VR(仮想現実)に加え、
MR(複合現実)も楽しめるという
ヘッドセットの最新モデルである。
先だって、Appleの「Vision Pro」も
6月に発売され、VRヘッドセット端末の
競争が今後より一層激しさを増すのは
明らかだ。
こうした新しいツールは、
技術的な側面も気になるところだが、
併せて消費者の情緒にどのように
訴えていけるのかが大切。
その視点を常に怠らないようにする
ブランドが、中長期的には優位に立つ
であろうことを忘れてはならない。