お彼岸に咲くから彼岸花
彼岸花(ひがんばな)の正式な学名は、
リコリス・ラジアータ。
リコリスというのは、甘草(かんぞう)の
英訳として覚えていたので、同じ仲間だと
いうのが少々意外だった。
こちらのWikipediaにもある通り、
他の呼び方として、
・曼殊沙華(まんじゅしゃげ)
・葬式花
・墓花
・死人花
・地獄花
・幽霊花
・捨て子花
といったかなり多くの別名、
ないし地方名を持っている。
そして、そのほとんどが、何とも
不吉な印象を抱かせる名前である。
確かに、お墓のそばに植えられて
いることが多い。
丁度お彼岸の頃に咲くということで、
お墓参りの際に目にする機会が多い
ことも関係しているのだろうか。
Wikipediaをよく読むと、その理由も
書いてあった。
毒性があり、モグラやネズミ、虫などの
害から、墓地や水田の畔を守るために
人為的に植えられたことが多いという
歴史に由来するようだ。
ヒトが摂取しても、場合によっては
死に至る危険があるほどに毒性が強い。
これらの事情が全てあいまって、
死を連想させる別名が各地で付けられた
というわけ。
この花の英語名がカッコいい。
Spider Lily
あるいは
Red Spider Lily
である。
Spiderはスパイダー、蜘蛛である。
たくさんのおしべとめしべが
天に向かって優美に弧を描く様子を、
蜘蛛の足に形容したのだ。
スパイダーマンのコスチュームが
赤メインなのは、ひょっとしてこの
スパイダーリリーから連想が働いて
いるなんてことはないだろうか。
まぁ、ヒーローが赤い色というのは
極めてオーソドックス/定番なので、
関係ないだろうとは思うが。
正式な名前に加えて、このように
愛称を沢山もらえるというのは、
それだけ人々の生活に密着している
ことの証左だ。
商品やサービスを作って売る立場に
あるならば、こうやって様々な種の
別名をいただけるような、そんな
商品・サービス設計を心がけると、
より長く、深く愛していただける
可能性が高まるのではないか。
命名段階で仕込めなかったとしても、
販促で仕込むことだってできる。
キットカットが、「きっと勝つ」に
引っ掛けて、受験の季節の定番へと
発展したきっかけは、あくまでも
偶然の産物。
既に名前が決まっていたとしても、
ブレインストーミングでアイデアを
色々と出しまくれば、
自らの特性に見合った素敵な愛称に
出会うことが、きっとできるに
違いない。
お彼岸時に一斉に咲いたと思えば、
あっという間に哀れな姿へと
身をやつしてしまう彼岸花だが、
秋の彼岸が来る度にほぼ確実に
思い出してもらえるという「役得」を
ちょっとだけ羨ましく思う。