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不況は成長のチャンス

日曜日の朝は、時間が許す限り、
読書勉強会にお邪魔している。
最近鬼籍に入られた稲盛和夫さん
薫陶を受けた友人(先輩)が主催して
下さっており、毎回非常に良い刺激を
もらえて有り難い限り。

現在読み進めているのが、
稲盛和夫著『燃える闘魂』である。

JALを見事に再生し、取締役を退任した
後のタイミングで書かれた、稲盛流の
経営論エッセンスである。

タイトルがいかにも精神論に偏っている
印象
を与えかねない。
実際、読み進めていても、精神論に多くの
紙幅が割かれているのは事実である。

しかし、ただただ精神論、根性論で終わる
訳ではもちろんなく、じっくり行間を読み
込んでいけば、様々なヒントが散りばめ
られている。

今回読んでいた箇所に、タイトルの
「不況は成長のチャンス」という
項があった。
そして、そのための具体的な方策として
以下の4つが挙げられていた。

①従業員との絆を強くする
②あらゆる経費を削減する
③全員で営業する
④新製品、新商品の開発に努める

『燃える闘魂』第二章後半

この④のところに、京セラの営業マンが
釣り具メーカーに提案した、釣り竿の
ガイドリング
の話が出て来る。
その話が、正に提案営業の見本であり、
かつマーケティング活動のお手本のような
事例だなと思ったので、簡単に紹介したい。

投げ釣り用の竿には、投げたときに釣り糸が
スムーズに走るように金属製のガイドリング
と呼ばれる部品が付いている。
このガイドリングが、釣り糸の滑りが悪く、
また大物がかかると摩擦で糸が切れる
という問題があった。

金属製に代えてセラミックス製にすれば、
滑りがよく、釣り糸も切れにくくなるはず。

目ざとく気付いた営業マンが、
メーカーに根気強く提案し続けた結果、
実際にテストで試してみることに合意。
そして、セラミックスが金属に比べて
案の定素晴らしいパフォーマンスを示す
ことが証明され、採用へと至った
のだ。

その後、セラミックス製のガイドリングは
全世界に広がり、この本の出版時点でも
京セラは毎月数百万個もの注文を受けて
いるという。

本の中では、不況の時こそ新商品開発を
行うべきだ、という文脈に位置付けて
この事例を紹介しているのだが、
不況時かどうかにかかわらず、
むしろ常日頃から一貫して持つべき
マーケティング志向の好事例
だと
解釈できる。

顧客である釣り竿メーカーの、その先に
いる釣り人が抱えている問題点
(=釣り糸の滑りが悪い、切れる)
を解決するために、自社が貢献できる
ことを探し出した。

ガイドリングを金属からセラミックスに
変更することで、最終消費者である
釣り人の問題解決を行い、それによって
釣り具メーカーの売上アップという
課題解決をも行うことに成功したのだ。

「B2B」のマーケティングは、
「B2B2C」を意識して行うべき
というのは、
よく言われるところである。
最後の「2C」で必要なベネフィット、
必要な問題解決が何なのかを理解し、
そこをクリアすることが、
自社の直接顧客の問題解決につながり、
結果として自社の売上・利益につながる。

このガイドリングの事例は、
京セラ社内でもよく引き合いに出される
有名な話
だとも伺った。
確かに、見事な成功事例であることは、
疑いないところだろう。

好況のときは、お客様の顕在ニーズに
応えるだけで精一杯になりがち。
その意味で、不況のときは、潜在ニーズを
探るチャンスだと捉えることもできる。
いずれにしても、マーケティング志向の
重要性を伝えてくれる好事例
である。

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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。