「鬼十則」と「福十訓」
電通の「鬼十則」と言えば、中興の祖とも
言われる4代目社長の吉田秀雄氏が説いた
行動規範として、つとに有名である。
モーレツ社員を彷彿とさせる内容で、
必ずしも時代にマッチしていないかも
しれないが、非常に本質的なことが
ズバリと指摘されていて、胸に響く
ものがある。
以下、鬼十則を引用する。
仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
周囲を引きずり回せ、引きずると引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらない。
頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
この鬼十則をパロディにしたわけでは
ないが、ある意味「下敷き」にして、
ユニークな「福十訓」なる教えを作った
起業家がいる。
「日本ママ起業家大学」の学長を務める
近藤洋子さんがその人。
先日オンライン視聴した
ドラッカー学会の大会において、
近藤学長のお話を聴く機会に恵まれ、
この「福十訓」も初めて耳にしたと
いう次第。
ウェブサイトに、周りの人にも広めて欲しい
というメッセージがあったので、
「鬼十則」との違いが際立っている部分を
太字にしつつ、ここに引用させていただこう。
一、 仕事は自ら創りだしたもののほうが、与えられたものよりもずっと楽しい。
二、 仕事とは、喜ばせた相手から報酬と感謝を受け取り、自分も嬉しいものであり、「お金のためにがまんする嫌なこと」ではない。
三、何のためにいくら収入を得たいかをまず考え、それを元に仕事と時間の計画を立てよう。どれだけ収入を得ても満足を得られないなら自分も家族も不幸にする。
四、自分が仕事を通じて幸せにしたいひとを具体的に想い描き、その人に向けて発信し熱い支持を得よ。すべての人を客にしようと思わなくていい。
五、 やりはじめたら続けよう。ペースを落としてもやり方を変えてもとにかく続けること。うまくいかないのは、うまくいくまでやらないからである。
六、周囲を頼れ。家族は巻き込め。周囲に相談し、助言を求め、手伝ってもらい、感謝を返す。助け合って成長すれば、互いの関係がお金にかえられない財産となる。
七、ワクワクする夢を持て。成功した未来の自分を具体的にイメージせよ。
未来の自分が見えれば、今の自分に忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
八、自信を持て。誰だって誰かを幸せにすることができ、もちろんあなたにもできる。相手を少し幸せにできる自信は、仕事の根源であり、あなたの生きる糧になる。
九、頭は常に全回転。八方に気配りと感謝を忘れるな。提供する本質は気配りであり、受取る本質は感謝である。サービスとはそのようなものだ。
十、弱みを見せるのを恐れるな。疲れたら休め。感謝を忘れなければ泣き言をいってもいい。それでも応援してくれる人があなたが一生付き合う客であり、仲間であり、家族である。
さて、皆さんの感想はいかに?
ママであることと、起業家であることの
両立を支援しようというのが、
ママ大学の目指すところ。
2016年に発表した頃は、
「何を甘いことを・・」という反応が
多かったというこの「福十訓」だが、
年々賛同者が徐々に増え続け、
「時代が追い付いてきた」感触を
得ている様子がサイトにある文章から
読み取れた。
「鬼十則」を否定しているように読める
部分もありつつ、それをベースにして
より現代的な価値観を加え、昇華させた
という評価も可能だろう。
読んでいると、非常に元気が出て来る
この「福十訓」。
そのままプリントアウトして、日々
眺めるもよし。
自分なりの「十訓」を作り上げるための
参考にするもよし。
まずは、素敵な一文一文を、
じっくりと味わい尽くして欲しい。