持てる資源をいかに活用するか
起業論の世界で、
「Effectuation」
という概念がある。
以前にここでも取り上げたことが
ある。
上記エントリーに書いた内容の、
エッセンスをまとめてみるならば、
要はこんな感じだ。
Effectuation(イフェクチュエーション)とは、ブリコラージュ(あり合わせで何とかする「器用仕事」)とほぼ同義。
今あるものでとにかく何か始めて、そこに新しい資源を加えることで最適化、変化、進化させていくこと。
理屈であれこれ考えてから始めるのでなく、まず行動してみて何が足りないかを知り、走りながらその穴を埋めること。
このEffectuationを実践した例と
して、以前に聞いた記憶のある
話を紹介したい。
スウェーデン北部にある
「アイスホテル」である。
その名の通り、氷で出来たホテル。
冗談ではなく、氷点下の客室に
泊まるという、何とも聞いただけで
身震いしそうな場所である。
スウェーデンは、ご承知の通り
相当寒い。
北海道よりもずっと緯度が高い
ので当然と言えば当然だろう。
観光資源となっているフィヨルドは、
氷河が入り江を侵食してできる
複雑な地形である。
それだけ寒いので、冬場はお客様を
呼び込みづらい。
避暑に来る夏に比べたら、
冬の需要は無きに等しい。
そんな「何もない」状況で、
このアイスホテルを開業した
創業者は、どういう発想をした
のか?
「何もない」のではなく、
「寒くて氷が融けないという
環境がある」と考えたのだ。
ないものに注目するのではなく、
それを逆転させて、付加価値に
結び付ける。
正に「コロンブスの卵」的な
発想である。
氷が融けない環境であれば、
氷で出来たベッド、
氷で出来た机と椅子、
氷で出来た調度品類、
とにかく氷尽くしの部屋に
宿泊するということが、
やろうと思えば可能になる。
誰がそんな過酷な環境に宿泊を
希望するのかといぶかる人も
多いだろうが、物珍しい体験には
ちゃんとお金を払う人がいるもの
なのだ。
既に30年程このホテルが続いて
いるという事実が、それを証明
している。
起業というのは、上手く行かなくて
当たり前の世界。
上手く行かなければ、ついぞ言い訳の
一つや二つをしたくなるもの。
あれが足りない、これが足りない、
いくらでも不足は見つけられる。
しかし、成功する起業家は、決して
そこで止まらない。
足りない、ならばいまある資源で
何が出来るか考える。
止まらずに、とにかく動いてみて、
突破口を見つけるためのいとぐちを
探してみる。
アイスホテルも、決して最初から
今のコンセプトが出来上がっていた
わけではない。
驚いたことに、日本の「氷の芸術」
にインスパイアされて、日本から氷の
彫刻家を招き、講習会を行ったのが
最初のきっかけだったそうだ。
その後、氷でホールを作り、そこに
あるグループが泊まったことから
着想を得て、アイスホテルの構想が
ようやく固まったらしいのだ。
あきらめずに、とにかく何でも
やってみる精神。
そして、やってみてお客様の反応を
つぶさに確認し、よりお客様が喜ぶ
方へと潔く変えていく精神。
それこそがEffectuationの精神であり、
起業家が成功する上で欠かせない
考え方なのだ。
昨年や今年は、コロナ禍の影響を
モロに受けているだろう。
早期に、世界中を安心して移動
できる時代が戻って来ることを
願ってやまない。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。