「フィジタル」と「OMO」
アメリカで、フィジカル(物理的な)
とデジタルを融合した造語である
「フィジタル」という言葉が使われ
始めたのは、5、6年程前だったと聞く。
この、「フィジタル」という概念が
意味するところは、現実世界と、
仮想現実=デジタルとの境目が、
融合して一緒くたになるということ。
ということは、最近よく耳にする
「OMO」(Online Merges Offline)
=オンラインとオフラインの融合
とほぼ同じことを指していることに
なると思われる。
調査会社のユーロモニターが、
2021年の消費者トレンド Top10
というものを発表しており、
その中に「フィジタルリアリティ」
なる言葉が入っていた。
「フィジカル」+「デジタル」に
更に「バーチャルリアリティ(VR)」
をトッピングした造語である。
ここまでテンコ盛りになると、
耳にした際に何を意味しているかが
すんなり入ってこない。
概念、コンセプトとして説明すると
分かりにくさがあるとはいえ、
実際に世の中で起きていること、
見て、体験した方が、
「フィジタル」の
何たるかは理解しやすい。
実のところ、この「フィジタル」は
誰もが毎日のように経験していると
言っても過言ではないだろう。
例えば、コンビニやスーパーなどで
買い物をする際、スマホに入っている
アプリを起動して、バーコードを
ピッと読み込んでもらう光景は、
既に日常的である。
支払い、あるいはポイント付与の
ために、スマホを活用している人は、
既に「フィジタル」体験をしている
のである。
モノを買うというフィジカルな経験
と、スマホの通信機能を使って支払い
やポイントのやり取りを行うという
デジタルな経験とが、融合している
ことを理解してもらえると思う。
ユーロモニターのレポートでは、
アメリカ人のHip Hopアーティストで
あるTravis Scottが、Fortniteという
オンラインゲームと提携、ゲームの
世界でコンサートを行い、視聴者は
VRヘッドセットでそれを楽しんだと
いう事例が挙げられていた。
コロナ禍により、コンサートなどの
「三密」が心配されるサービス産業
は、この一年で一気に「フィジタル」
化が加速したと言えるかもしれない。
「フィジタル」にしても、「OMO」
にしても、現実に起こっていることを
概念として整理した結果、これらの
言葉が生まれてきたと思われる。
先に「フィジカルとデジタルを組み
合わせてみよう」とか、「オンライン
とオフラインを掛け合わせよう」と
考えたわけではなく、
「スマホで支払い出来たら便利かも」
「オンラインゲームの世界の中で
コンサートやったらクールじゃね?」
という具体的なアイデアが先にあり、
後から考えてみたら、それって
「フィジタル」だったり「OMO」
だったりした、ということだと思う。
理論や理屈が出来上がってから、
それに基づいて何かを展開しようと
することも勿論大切。
しかし、とにかく新しいことに
チャレンジする、やってみることで、
世の中にアイデアを問うていくことや、
それが後から理論化されるような何かを
生み出すことは尊い。
「フィジタル」という言葉から、
頭でっかちにならずにまずは行動する
ことこそ尊い、そんな風に思いを致した
のであった。