「顧客は何を買うか」という問い
「一日一ドラ」と称して、
毎日必ずドラッカーの文章に触れる
ことを始めてから、80日ほどが
経過しました。
触れただけで終わらせず、
必ず X(Twitter)でその内容を
つぶやくようにしています。
一日平均1ページも進んでおらず、
『現代の経営㊤』がようやく70頁
あたりまで来たところ。
正に亀のような歩みです。
ここ数日、「顧客は何を買うか?」
という問いについて触れているの
ですが、このあたりの文章が、
経営の原点であると同時に、
マーケティングの原点でもある
ことに思いを致していました。
この問いは、
「自分が何を売るか?」の裏返し
となります。
大抵の場合、商売をしている人間は
自分が売っているものを十分に把握
していると思いがち。
しかしながら、本当に自分が何を
売っているか、誰もが分かっているか
というと、意外と分かっていない人が
多いのが実状ではないでしょうか。
例えば、自動車販売店であれば、
「自動車を売っている」、
パン屋なら「パンを売っている」、
酒屋なら「酒を売っている」、
そのような認識になりがちでしょう。
これを顧客の側から見るとき、
自動車販売店に行く客は、必ずしも
自動車そのものを買いたいと思って
いるとは限りません。
タクシーとどちらがコスパが良いか
比較した上で、どちらの移動手段が
良いか検討しているとしたら、
この場合、顧客が買うのはあくまで
「移動する手段」です。
あるいは、ちょっと余裕のあるお金を
高級車に使うか、高級時計に使うか、
はてまた高級家具に使うかで迷って
いる顧客は、「富の象徴」を買いたい
ということになりそうですね。
パン屋に行く客は、確かにパンを買いに
行くと言っても間違いではないですが、
むしろ「美味しい朝食」を選びにそこを
訪れたかもしれないですし、あるいは
「3時のおやつ」を選びに来たのかも
しれません。
酒屋に行く客といっても、
「手頃なギフト」としてお酒を検討して
いる人もいれば、「自分へのご褒美」と
していつもはスイーツを買うところを
代わりにお酒にしようとしているのかも
しれません。
『現代の経営㊤』にある事例では、
ガスレンジメーカーの話が出てきます。
顧客たる主婦は、レンジそのものでは
なく、「料理のための簡単な方法」を
買っているのだとドラッカーは喝破
しています。
ガスレンジをつくって売っている立場
からすると、つい「ガスレンジ」を
売り物と思ってしまうわけですね。
しかし、顧客としては、それがガスで
あろうと電気であろうと石炭や木炭で
あろうと、あるいは電子であっても、
「簡単に料理する」という目的が
叶えばよいわけです。
この辺の話は、レヴィットという学者が
「マーケティング近視眼」という有名な
論文で論じた内容に通じるのですが、
書かれた年代を踏まえると、レヴィットは
ドラッカーの『現代の経営』に触発されて
論文を書いたのだろうと推測するところ。
こうして毎日じっくりとドラッカーを
読み進め、自分の血肉にしていく感覚を
日々楽しんでいきたいと思います。