たねやのブランド力の原点
経営者JPというエグゼクティブサーチ
会社が、情報発信に力を入れている、
という話を先日書かせてもらった。
「私が経営者になった日」
というタイトルで、著名な経営者に
インタビューを敢行し、その内容を
まとめた記事がある。
直近で、インタビューされているのが、
和菓子の「たねやグループ」CEOの
山本昌仁氏だ。
たねやと言えば、近江八幡にある
「ラ コリーナ」が、辺鄙な地(失敬!)
にあるにも関わらず、すごい数の動員に
成功していて話題になっている。
(下記の記事はコロナ前のものである点、
ご容赦の程。)
たねやの本社がある滋賀県の近江八幡。
近江と言えば「近江商人」を思い出す。
あの「三方よし」の発祥である。
そんな地で、たねやが開いたフラッグ
シップ店舗は、自然との共生を図る
同グループの思想をありのままに体現
した空間となっている。
たねやは創業150年。
500年の歴史を持つとらやなどもある
和菓子の世界においても、十分に
老舗であることは間違いない。
そんな老舗であるにも関わらず、
「末廣正統苑」(すえひろしょうとうえん)
と呼ばれるバイブルが作られたのは、
わずか40年ほど前。
日本橋三越に初出店する際に、
それまでこじんまり家族経営的にやって
いたところから、より大きな飛躍をする
タイミングで、自分たちの商売のあり方、
理想像を明文化したのである。
家族だけであれば、以心伝心、肌から肌へ
伝わるものを頼りに経営できた。
しかし、家族外のメンバーがどんどんと
増えていった時に、商売において大切な
「何か」が置き去りにされかねない。
そんな危機感を踏まえて、ブランドの
ビジョン、ミッション、バリューを
明文化し、誰が携わっても同じ気持ちで
商売に専念できるよう、意を尽くした
のである。
CEOである山本氏自身が、何か迷ったときに
このバイブルたる「末廣正統苑」に戻り、
読み返してみる。
その度に、新たな気付きがあるようだ。
同じ文章がそこにあるだけであっても、
自分が直面している状況というのは
その都度異なっている。
となれば、今その問題に直面している
自分は、その同じ文章に対して異なる
解釈をするのも当然だろう。
何か迷ったら、これに戻ろう。
困った時には、これを見返そう。
ピンチの際は、これを頼ろう。
そんな「バイブル」を持っておくことは、
精神衛生的に間違いなくプラスであり、
それが日常のパフォーマンスに大きく
影響するに違いない。
私にとっての「バイブル」は、
ドラッカーであり、カーネギーであり、
渋沢栄一の「論語と算盤」であり、
最近では稲盛和夫あたりだ。
迷ったときの羅針盤は、是非とも
持っておきたいものである。