日本酒にマーケティングを持ち込むと
ワインやウイスキーなどの洋酒と
比べて、日本酒の価格は平均して
低めの設定になっていることが
多いと言えます。
高いお酒は売れない!
そのような「迷信」に近い考えが
業界の中で根強かったとも言える
のではないでしょうか。
そんな「迷信」が、ここ数年で
崩れつつあります。
富山で、「IWA」という高級日本酒を
醸しているのが、ドンペリニヨンの
最高醸造責任者をかつて務めていた
リシャール・ジョフロワ氏。
その「IWA」は、720mlで13,000円という
強気の価格設定ですが、素敵なストーリー
も手伝ってか、好調に売れているように
伺います。
この「IWA」よりも更に高級な日本酒が、
大人気を博しているのをご存知でしょうか。
5月27日付けの日経MJ、1面に登場して
いるのは、「SAKE HUNDRED」と
「MINAKI」という名前のお酒。
いずれのブランドも、主力商品が1本
720mlで30,000円を優に超えるという
ラグジュアリーぶりなのです。
創業者へのインタビュー形式で構成
された記事から伝わって来たのは、
これまで「伝統」的なやり方しか
なかった日本酒業界に、いかにも
マーケティングらしい視点、方法論を
持ち込んだということ。
いずれの会社も、アップルやファースト
リテイリング(ユニクロ)のように、
自社工場を持たない「ファブレス」
方式を採用しています。
そして、製造を請け負ってくれた酒蔵に
対して、「コンセプトシート」を元に
酒造りを依頼しているのですね。
どんなお客様に飲んでもらうのか、
どんなシーンで飲んでもらうのか、
その時のお客様の心境などを入念に
考え尽くしている様子が分かります。
正にマーケティングの基本に忠実な
様子が描かれているわけですが、
逆に言うと、これまでの日本酒業界に
おいては、こうした取り組みはあまり
見られなかったのでしょう。
だからこそ、日本酒の持つポテンシャルが
十分には引き出されて来なかったのでは
ないでしょうか。
「良いものをつくれば売れる」
というのは、半面では真実ですが、
結局その「良いもの」が独り善がりに
終わってしまう可能性もまた大きい
わけです。
その点、新しい日本酒の旗手たちは、
売り手の視点で「良いもの」をつくる
ことを当然に実現しながら、
同時に買い手の視点で「欲しいもの」
「買いたくなるもの」を仕上げて
いると言えるでしょう。
私自身は、残念ながらまだこれらの
プレミアム勢を飲む機会を得ては
おりませんが、話のタネに一度は
飲んでみたいものですね。