楽しいところに人は集まる
最近TVなどでも引っ張りだこの
日本料理「賛否両論」の店主、
笠原将弘氏。
たまたま少し前に、「賛否両論」の
お弁当をいただく機会があった。
「賛否両論の和ドカ弁
いろいろ天ぷらご飯」
と題された、品数が多くボリュームも
たっぷりのお弁当である。
お弁当の味に関しては、
的確に評論できる程の舌を
持ち合わせていないので、
非常に美味しかったという
感想を共有するにとどめたい。
店主の笠原さんのインタビュー
記事が、「致知」に載っていた
のを思い出して引っ張り出した。
2023年5月号なので、
4月に発行されたものである。
改めて読んでみると、笠原さんと
私は昭和47年生まれで同い年。
武蔵小山で生まれ育ち、両親が
営む焼き鳥屋「とり将」で多くの
時間を過ごしたらしい。
高校を卒業したタイミングで、
父親の伝手で、あの名料亭である
「吉兆」グループの「正月屋吉兆」
に入社、9年間修業に励む。
最後は、父親ががんで倒れ、
実家の焼き鳥屋を継ぐことを決意。
残念ながら実家に戻る前に、
父親は亡くなってしまう。
既に高校生の時に母親もがんで
亡くしていた笠原氏。
実家を継いでからの半年は、
孤軍奮闘の毎日。
最初こそ、以前からの常連さんが、
応援の意味もあって来店して
くれることが多かった。
しかし父親との会話を楽しみに
していた方々は、徐々に足が
遠のくのは仕方がないこと。
頑張ってもお客様は来ない。
食材が余り、経営が厳しくなる
負のスパイラル。
どうすればいいのかわからない
日々を過ごしたそうだ。
料理を食べてくれる人がいないと、
こんなにも切ないものなのか、
そう実感した笠原氏は、
割り切って自分のやりたいことを
やろう、自分の色を出そう、
そのように決断した。
有り余っていた時間を使って、
吉兆で学んだ手の込んだ料理を
作っては、研究を重ねていった。
また、店舗の前に置く黒板に、
他愛のない一言をちょくちょく
書くようになった。
「きょうは夫婦喧嘩しました」
「築地に行ったら定休日でした」
黒板の空きスペースを埋める
ための、苦し紛れのアイデアで
ある。
すると、それを見たお客さんが
面白がって入ってくるようになり、
徐々に新規来店客が増えていく。
一度来てくれさえすれば、
手の込んだ素晴らしい料理の味を
理解する人が現れるのは、
そう時間はかからないことだった。
2年と経たずに人気店へと変貌を
遂げ、メディアの取材が引きも
切らない状態へとなったのだ。
この経験を通して、楽しいところに
人は集まるのだということを、
身に沁みて感じたそうだ。
心構え一つで、負のスパイラルを
正へと転換できた笠原氏本人の
「モットー」である。
いつでも上機嫌で、
口角をアップさせて、
仕事を心の底から楽しんでいれば、
正のスパイラルを創り出すことが
できるのだ。