皆田引水
我田引水という四字熟語がある。
多くの日本人がよく知る言葉だろう。
デジタル大辞泉によれば、
《自分の田に水を引く意から》物事を、自分に都合のいいように言ったりしたりすること。我が田へ水を引く。「我田引水の説」
とある。
どんな話をしていても、いつの間にか
自分の興味・関心のある方向へと、
半ば無理やり持って行く人。
自分の都合ばかりを押し付ける人。
世の中、そういう人が一定の割合で
いらっしゃる。
人間誰しも、自分が一番かわいい。
勿論例外もあるだろうが、大半の人
にはこれが当てはまるはず。
だからこそ、我が田んぼに水を
引きたくなる。
それが当たり前の感情というものだ。
しかし、それでは他人との良好な
コミュニケーションを築くのが
難しくなるのも、これまた当たり
前の話である。
お互いを理解しよう、という気持ちが
感じ取れず、信頼関係を構築できない
ために、一人去り、二人去り、
そして周りには誰もいなくなったり、
いても似た者同士だけ、なんてことに
なりそうだ。
信頼関係の構築には、やはり
「聴く」姿勢が大切。
傾聴力の大切さは、多くの人が
語っているところ。
口が一つで耳が二つあるのは、
自分が話す量の二倍は聴きなさい
ということだ、なんていう訓示
めいた話も、誰もが一度や二度は
聞いたことがあるのではなかろうか。
つい自分の話をしたくなってしまう
のを抑えて、人の話を聴く。
そんな意思決定基準を明確に頭の中に
インストールしているつもりでも、
時折は周囲からの客観的なフィード
バックを得て、言行一致しているか
確認する必要があるだろうなぁ、
と考えている。
話を「我田引水」に戻す。
自分の田んぼにさえ水を張れれば、
他人のことなど知ったこっちゃない、
なんていう態度を取り続ければ、
共同体からはやがて痛いしっぺ返しを
食らうのは必定。
自分のことばかり考えることを避け、
周りの人たちに価値を提供する、
つまりは他人の田んぼにも水を
引いてあげる、
そんな意識が大切である。
そのことを思い出しやすくする言葉を、
週末に走っているときに思い付いた。
皆田引水(かいでんいんすい)
である。
そう、我が田んぼだけに水を引くの
ではなく、皆の田んぼに水を引く。
この言葉をノートに書き留め、
反芻して、パッと意識に上りやすく
することによって、自分の行動を
律することとしよう。
ググってみたら、同じようなことを
考えた人も過去にいないことはない
様子が伺えたが、ほぼ皆無に近い。
こういう、意外と思いついた人が
少ないけれど良質な言葉を見つけると、
とても嬉しくなる。
「意思決定基準」と呼んでいる、
このような言葉の類は、自分にとって
非常に大切な人生のパートナーである。
より多くの「意思決定基準」を
集めたり、創ったりすることで、
人生は間違いなく望ましい方向へと
近づいていくのだ。