「修羅場」を疑似体験する
「修羅」と聞くと、極道とか、ヤクザとか、
生死の狭間を彷徨うとか、そういった
おどろおどろしいイメージがよみがえる。
元々はインドの鬼神である「阿修羅」の略
である。
「鬼神」の代わりに「戦闘神」と呼ばれる
こともあるようだ。
仏教の六道の一つに「修羅道」があり、
それが「争いの世界」とされるところ
から、一般に「修羅」というと争いの
ことを指すという訳である。
ゆえに、「修羅場」と言えば、
そのまま「争いの場」ということ。
ビジネス現場でも、様々な「争いの場」
というのは発生する。
その中には、まさに「修羅場」という
言葉を使いたくなるような、
えげつない場面もあるだろう。
そんな「修羅場」の中から、
いかにも実際にありそうなものを
取り上げたケーススタディ本が
出版された。
思わず「あるある!」と言いたくなる
ケースが30個。
それら、痺れる場面をどう切り抜けるか
考えながら読み進めることで、
自ずと思考力、対応力が高まることが
期待できる本である。
著者の木村尚敬さんは、あの冨山和彦さんが
率いる経営共創基盤のパートナー。
『ダークサイドスキル』を始め、他にも
ベストセラーを数々上梓している
経営コンサルタントである。
選ばれているケースが、実にリアリティ
溢れている。
より大企業に当てはまる内容が中心とは
いえ、社員数30名ないしは50名以上の
企業規模であれば、この手の「修羅場」が
生まれる可能性は高い。
解決策へと導く著者の思考回路が
しっかりと書かれており、
それらがいちいち本質的な問題解決を
志向する骨太な内容。
「ふむふむ」と納得しながら読み進めて
もよいが、できることならまずは自分
なりに仮説を立ててみて、著者の解決法
と比べながら読むことを強く勧めたい。
私も中間管理職だが、実際に自分にも
当てはまりそうな場面もあれば、
これは私が所属する中小企業(社員数
50名ほど)のサイズではさすがにない
なぁというケースもある。
いずれにしても、当事者になった気持ち
でケーススタディを読み解くことは、
思考訓練としてプラスにこそなれ、
マイナスになることはない。
「修羅場」など経験しない方が楽だし
幸せかもしれないが、
人生長く生きていればそういった
場面が訪れる可能性はある。
読書で疑似体験しておくことで、
いざそれに近い場面が訪れたときに
最善の意思決定ができるよう、
鍛えておくことが重要。
中間管理職をお務めの方には、
すべからくお勧めしておきたい。