徳は孤ならず、必ず隣有り
自宅の最寄り駅構内にあった
本屋さんがなくなってしまって
かれこれ10年は経つだろうか。
駅改札を出て目の前の好立地。
しかしながら、時代の流れには
逆らえず、閉店。
しばらく空き区画となっていたが、
ほどなくマツモトキヨシが後釜に
収まった。
書店は劇的にその数を減らしている。
出版科学研究所の調べによると、
2022年度の日本の総書店数は
11,495店、20年前に比べてほぼ半減
となる恰好だ。
我が最寄り駅にあった書店の名は、
有隣堂。
未だ都心でもチラホラ名前を見かける
ことがある。
その有隣堂の社長が、
『致知』12月号に随想を寄せていたので
読ませてもらった。
これまであまり意識することがなかった
のだが、有隣堂の社名の由来は、
「徳は孤ならず、必ず隣有り」という
論語の一節から来ている。
こちらのページにある、前社長の
言葉と思われる説明を抜き出そう。
『致知』の随想の中では、
書店の売上がまだ調子が良かった
タイミングで、痛みを伴う改革を
断行したときの話が紹介されていた。
社内では、目先の好業績を受けて
危機感のない状況。
しかし、業界の先行きは真っ暗。
そこであえて、コスト削減の徹底や
部門間をまたぐ人事異動などの
改革を断行したのだという。
その延長線上で、デベロッパーから
新業態への挑戦を打診されたのを
受けて果敢にチャレンジしてみたり、
新たな顧客のエントリーポイントとして
自社YouTubeチャネルの立ち上げを企画、
3年で25万人登録まで地道に成長させる
といったことにも挑戦してきた。
売上高の4割にまで減少した書店業では
あるものの、人々の人生を実り豊かに
するために欠かせない存在であるとの
信念を持つ松信健太郎社長。
書店の枠を超えた挑戦を通じて、
「書店のある光景」を残し続けることが、
ご自身のミッションであると捉えられて
いるご様子。
書店にとっては、今後もまだまだ
厳しい局面が続くと予想される。
そんな折であっても、決してブレる
ことなく、信念を持って正しいと思う
道を行く、社長の覚悟が伝わってくる
随想だった。