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日本酒に新しい価値を加える試み

最近飲んだ日本酒のラベルなのだが、
何か不思議な感じがしないだろうか?
「川口納豆」という名前が、
ドドーンとど真ん中に陣取っている。

「日本酒なのに納豆?!」
一瞬店頭で戸惑ったわけだが、
間違いなく「特別純米酒」とあるし、
「美山錦」というのは有名な酒米だ。
「原酒」という言葉も踊っている。

こちらの川口納豆さんは、
宮城県で70年以上にわたり商売を続ける
正真正銘の納豆メーカー
その川口納豆が栽培した酒米・美山錦を
使って醸したのがこのお酒。

酒屋さんの店頭でこのラベルを見たときの
違和感を、想像して欲しい。
「これってどういうこと?!」
とつい確認したくなるのである。

そこで、酒屋さんが背景にあるストーリー
きちんと説明することができれば、
そのストーリーに付加価値を感じて、
買いたくなるお客様が増えるであろうことは
容易に推測されるところ。

納豆に使われる大豆の栽培に、並々ならぬ
こだわりを持っていそうだ。
それが酒米の栽培にも活かされているなら、
その酒米で醸された酒も旨いに違いない、
そんな連想が働くのである。

日本酒の新しい売り方として、最近日経で
瓶詰ではなく缶詰することで需要喚起を
図る試み
が紹介されていた。

実のところ、缶詰の日本酒は既にスーパー
などに並んでいて、必ずしも新しくはない。
「菊水ふなぐち」や、「日本盛」あたりの
日本酒をよく見かける。

それでも、珍しいことには変わりない。
ほとんどの日本酒は、瓶詰か、紙パック詰で
売られているからだ。

記事にある缶入り日本酒ブランドの
仕掛け人は、サブスクとクラファンという
今どきな二つの仕掛けと組み合わせて、
日本酒に新たな「付加価値」を付ける
意気込む。

「ICHI-GO-CAN(いちごうかん)」
というブランド名を冠する。
お酒の量が丁度一合入っていることと
掛け合わせた名前だ。

話題性は十分、だからこそ日経にも
取り上げてもらったということだろう。
ただ、クラファンの価格を見たときに、
ちょっと厳しいかもしれないな、
そんな感覚がよぎった。

記事にある通り、一合入った缶酒が
24種類楽しめる、埼玉の日本酒飲み比べ
セットが、送料込みで16,500円とある。
一合×24なので、四合瓶(720ml)にして
6本分、即ち
16,500÷6=2,750円
四合瓶1本あたりに換算すると
この値段となる。

私の肌感覚だと、四合瓶の日本酒は、
~1,000円:リーズナブル、期待は禁物
~1,500円:当たり外れがある
~2,000円:味のレベルがグッと上がる
それ以上:特別なとき用

という感じ。

飲み比べという価値や、
缶に入っているという価値など、
新しい価値と言えば確かにそうかも
しれないが、「特別なとき用」の価格を
払ってまで飲みたいラインナップなのか
と言われると、微妙
である。
飲んでみたいあんな名酒、こんな名酒が、
同じ金額以下で色々飲めてしまうからだ。

そんなことを考えた後に、クラファンの
サイトを検索して実績を確認してみた。
健闘したプロジェクトもありつつ、やはり
全体的には支援額集めに苦労した跡が
うかがい知れる。

その中で、主催者がまだ学生の頃に
立ち上げた
「東京農大の学生が醸すお酒」
というコンセプトのプロジェクトが、
群を抜いて多額の支援を得ていた。

他者からの「応援」を募るという
クラファンの性質に最もなじみやい、
分かりやすいコンセプトが受けたの
かもしれない。

いずれにせよ、これまでになかった
付加価値を、知恵を絞って付けていく、
そのチャレンジこそがマーケティングの
醍醐味であり、面白さ
だ。
こういう面白い試みがどんどん世の中に
出て来てくれるのは、無論大歓迎である。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。