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映画スラムダンクを観たので

連載時は小学生~中学生だった。小学校ではクラスメイトをキャラクターに当てはめてごっこ遊びして、中学校では漫画を回し読みして、高校では友達とスラムダンククイズを出しあって遊んでた。(「大栄学園の4番は?」ピンポーン「土屋淳!」みたいな)
私にとって青春の象徴みたいな作品。原作はもちろんアニメも録画して何度も観た。
好きなキャラクターは三井寿と桜木花道。
映画をやると聞いてからは、どんな内容だろうとどんな出来だろうと、絶対に映画館で観ると決めてた。

以下、感想をとりとめなく綴る。
読みきりのピアスを知ってたので、冒頭の兄とのシーンで「あぁっ」と心が重くなった。まず何より、リョーちんの過去が重い!過去パートに出てくる人々のキャラクターと、描写がリアルすぎてきつかった。沖縄の大人達とか、団地のオバサンとか。ああいう人達いるよなぁ。悪人じゃないけど、きっついんだよなぁ。
観賞後に感想巡りしてたらリョータのお母さんに批判的な人もいたけど、実際に夫と息子を立て続けに失ったらあんな感じになると思う。いや、むしろお母さんは相当頑張ってる方だと思う。ソーちゃんが亡くなった時はアラサーくらいっぽかったし。若いのに夫に先立たれて子ども3人と残されるだけでもしんどいのに、立ち直る時間もないまま、あんなに親孝行で将来有望な長男を亡くしちゃったら、もっと精神病んだり自暴自棄になってお酒や男に走ったりしてもおかしくないくらい。リョータは、ソーちゃんと比べて自分を卑下してたけど、お母さんは全然比べてなかったと思う。ソーちゃんの死から立ち直れなかっただけで。リョータのこともちゃんと大事にしてた。
アンナちゃんの明るさがご都合主義という感想もみたけど、私自身末っ子なので、ああいう立ち回りは理解できる。もともと明るくて前向きな性格っていうのもあると思うし、わざと無邪気に振る舞って、お母さんとリョータの機嫌をとってる面もあると思う。アンナちゃんが宮城家の救いになってたのはたしか。ソーちゃんも明るい性格だったし、亡くなったお父さんが明るい人だったんじゃないかとか、推測できるのも面白い。
正直、リョータの家族の描写と回想の多さには戸惑った。リョータの生い立ちが重すぎてしんどくなるというのもあるし、スラムダンク原作の雰囲気とのギャップが大きいと感じてしまった。アヤちゃんに一目惚れしたり、アヤちゃん大好きを隠さなかったり、アヤちゃんを忘れるために10人もの女子に告ったりする恋愛体質のリョータは、いなかったことになってしまったのか…。でも彩子さんはめちゃくちゃ可愛かったし、露骨な表現はしないけどリョーちんが彩子さんのこと好きな雰囲気は伝わってきた。晴子ちゃんも出番ほとんど無かったけど、ちゃんと可愛かった。
三井寿、桜木花道、ゴリあたりは原作とも旧アニメともほとんど違和感はなかった。ミッチーはリョータとの因縁が盛られていて、美味しい役回りだったと思う。不良時代にこっそり試合見に来てたり、復帰の時に頭下げたりするシーンが追加されて、ミッチーって根が純粋な奴でバスケが本当に大好きなんだなぁっていうのがよくわかった。顔もカッコいいし、プレイスタイルも熱いし、男友達に好かれるのもわかる。終盤の4点プレイでは私の中の徳ちゃんが「涙が止まらねぇよ、ぐひん」ってしてた。
逆に花道とリョータの原作の仲良しぶりがもうちょっと描写されると良かったのになぁ。原作のリョーちんはかなり花道を可愛がってるし、花道も懐いてるところが微笑ましかったんだけど。とにかく本作のリョーちんはクールなので。
大人になって原作を読み直して、流川楓というキャラクターの良さに気づいた身としては、映画の流川は活躍がだいぶ抑えられていて残念だった。なんか顎も細かった。でもレギュラーの中では一番華奢だっていうのが映画でよくわかって、原作のスタミナがない描写の説得力が増した。プレイヤーとして完成されてるようだけど、まだまだこれから身体を作らないといけないんだね。そして「そんなタマじゃねーよな」は完璧!だった!
カットされてるシーンは多かったけど、全て脳内で補完。脳内の信長が「わかってねぇなこの意味を」って腕組みするし、脳内の牧さんが「相手がいけるって時に仕事するのが深津って男だ」ってリョータに警告するし、脳内の土屋淳が「尊敬するで山王」って言うし、脳内の小暮が「2年間も待たせやがって」って言ってた。あとはワンカットだけ豊玉の岸本がうつって、豊玉戦も観たいです…となった。
試合シーンが最高だったのは言わずもがな。山王戦ってリアルにこんな試合だったのね、って。なんだかみんな生きてる、本当に試合してる、っていう感覚になって、作者のバスケと作品とキャラクターに対する愛情と誠実さを感じた。
山王工業はスポーツ強豪校らしさがしっかり出ていた。河田が顔の割りに声が高めなのが好き。沢北はビジュアル、声、プレイ、神社エピソード補完と全てが素晴らしくて、これ以上の沢北はないってくらい最高の沢北だった。アメリカで宮城と試合前にちょっと挨拶するのもよかった。沢北はずっとスーパースターでいてほしい。
実は観賞後、半日くらい気持ちが重くて、この気持ちはなんだろうってわからなかった。で、はたと気づいたのは、私はソーちゃんが亡くなったショックを引き摺ってるってこと。あんなに家族想いで、バスケのエースで快活なお兄ちゃんが、たった12歳で亡くなってしまうなんて。喪失感がすごい。なんでソーちゃんが…ってずっと心が重たい。でもこれってすごいことだ。それだけこのストーリー、キャラクター、井上先生の描き方に心を持っていかれたっていうことだ。
自分がソーちゃんの死を悼んでいることに気づいたから、山王戦後のお母さんとリョータの海辺のシーンを思い出すと心が救われるし、リョータがアメリカでバスケを続けていることや、ダイニングテーブルにソーちゃんの写真が飾られていることが希望あるエンディングだったことに気がついた。宮城家は前に進めてるんだなぁ。
私はスラムダンクのギャグの可笑しさとか、ヤンキーらしい勢いとか、バスケットプレイヤーとしてしか描かれない潔い人物描写とかが好きだったから、ギャグシーンはほぼカットされて、リョータの家族ドラマが軸に描かれる映画には少し戸惑ってしまったけど、作者も作品も読者も成長していて、あの頃とは違うっていうことを前提にした映画になっているんだと思う。
昔と同じことはやりたくない、やるからには今の自分が持っているものをぶつけていくっていう、井上雄彦というクリエーターの凄みを実感した。
ちなみにアニメのスラムダンクファンの夫は3DCGという時点で観る気がないらしい。もったいないと思うけど、もともと漫画やアニメの趣味が私とは違うので、まぁ人それぞれということで。私と同じくスポーツ観戦好きで、漫画の趣味も合う次男と一緒に観に行った。次男は原作通りにやってほしかったらしく、少々不満げだったけど、令和の時代に自分が親になって子どもと一緒にスラムダンク映画を劇場で観れたことが嬉しい。
年明けにもう一度観に行こうと思う。

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