對間美好妃さん(たいまみずき、東京都出身) 21世紀の日系移民(第6回) 布施直佐 月刊ピンドラーマ2024年10月号
今回はパライゾ地区でビューティーサロンBeauty Tokyoを営む對間美好妃さんにお話をうかがいました。
◎情報もないままブラジルへ
日本では美容学校を出た後ずっと美容室で働いていた。2018年に美容院をやめた後休みをとって色んな国を回りたいと思い、最初に訪れたのがタイであった。タイをいっぺんに気に入り自分で美容室を開業した。タイでは主に現地駐在の日本人がお客であった。
コロナ禍が始まった2020年、ちょうどタイのビジネスビザを更新しなければならなくなったが、更新料がかなり値上げされたため他の国に移ることを検討した。その時交際していた現在の夫が日本人とブラジル人のハーフだったためブラジルが選択肢の一つにあがった。彼は日本育ちでブラジルのことも知らず、ポルトガル語も全く話せなかった。彼の家族も日本に住んでいたためインターネットの情報を頼りにするしかなかった。ブラジルに関してはリオのカーニバルとサッカー大国であることぐらいしか知識がなかったが、「サンパウロのリベルダーデという街には日本人がたくさんいて暮らすにはそれほど不自由しないようだ」との印象を得て翌2021年3月に二人でブラジルに移った。
入国当初はリベルダーデのすぐ近くのセー地区のアパートに住んだ。そこが治安の良くない地域であることを初めて知ったのは大分後のことだ。知り合いも全くおらず言葉もわからない中、彼の家族のつてで紹介してもらった弁護士に結婚手続きを手伝ってもらい6月に入籍を済ませた。
◎Beauty Tokyoを開業
その後、夫の母親が来伯し物件探しや設立手続きを手伝ってくれ、早くも9月にはビューティーサロンBeauty Tokyoを開業することができた。オープン当初は日本人しか来ないだろうとの予想に反して、インスタグラムやフェイスブックの宣伝を見て多数のブラジル人が店を訪れてくれた。ちょうどクリスマスと海のシーズンに向けて女性たちが綺麗になろうとする時期に当たっていたのも幸いした。
タイで営業していた時は、タイ人は内気で話をあまりしないため施術は1時間以内で終わるのが常であった。一方ブラジル人女性はとにかく話好きで、最近起こったことから始まり自分のこれまでの人生等を全て語り、通訳を介して会話を行ったこともあって、施術前に話を聞くだけで1時間経ってしまった。最近は会話をうまくリードして施術に早く入れるようになった。
ブラジル人は何歳になっても美しさを追求する気持ちが衰えず、お客さんの中には自分で予約し地下鉄に乗って来店する90才の女性や、いつも一緒に来る80代の3人組の女性たちもいる。
今はリオ、ブラジリア、レシーフェからもお客さんが来るようになった。「今後は店を広くして扱える施術を増やし、『美容室だったらBEAUTY TOKYOだね』と言われる存在になりたい」。
◎便利だけど不便
日本の美容室で働いていた時は朝8時に出勤して夜12時まで店を出ることができなかった。美容師のオシャレなイメージを保つため、コンビニで買い物をしたり、ラーメン屋に行くことも禁止されていた。表参道にあるそのガラス張りの美容室は、美容学校時代には憧れの的であったが、いざ自分がその中で働いてみると、鳥かごの中に閉じ込められているように感じた。日本では一日の大半が仕事に費やされていたが、ブラジルでは仕事と私生活の時間が半々ずつくらいでストレスが全くない。今は日本に帰って暮らす気持ちはなく「(日本へは)旅行で行くのがちょうど良い」。
今年4月に日本に一時帰国をしたが、1か月くらい経つと「早くブラジルに戻りたいな」と感じた。また、日本とブラジルを比べると、「日本はとても便利だけど不便」、「ブラジルは不便だけど便利」。日本は何でも揃っているが決まったシステムから外れることが許されない。対照的にブラジルにはモノはあふれていないが、人によって臨機応変に細かいことに対応してくれる。化粧品や文房具を買うにしても日本は商品数が多すぎて、買う前に下調べをする必要がある。ブラジルは商品の選択肢が少なく、どれを買うか迷うことは少ない。
日本では友達に「変わっているね」とか「ぶっ飛んでるね」とよく言われた。ブラジルでは個性が強烈な人ばかりなので、自分が目立つことがなくとても生きやすい。日本でなら人目を引くような服を着て外出しても、人にじろじろ見られることはなく逆に「オシャレだね」と声をかけられたりする。
◎一回来てみれば良い
仕事以外の時間ではK-POPダンス、ホットヨガ、ムエタイなどの習い事に通っている。日本とタイにいた時には体を動かすことに関心がなく、全てブラジルに来てから始めたことばかりだ。ブラジルの食事も最初はあまり美味しく感じなかったが、今はフェイジョアーダが大好きになりかなり頻繁に食べている。
ブラジルに行くかどうか迷っている人は「来る前に下調べに時間をかけたり入念な準備をする前に、とりあえず一回来てみてブラジルを肌で感じた方が良いですよ。自分がブラジルに合う合わないはそれで決められるはずです」。
月刊ピンドラーマ2024年10月号表紙
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