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砂田竜也さん(38歳、大阪府出身) 21世紀の日系移民(第5回) 布施直佐 月刊ピンドラーマ2024年9月号

今回はリベルダーデの本格鶏白湯ラーメン専門店「とりこらーめん」で料理長を務める砂田竜也さんにお話しをうかがいました。


◎空手〜ブラジリアン柔術

日本では大阪で建築業を営んでいた。昼はそこで働き、夜は知り合いのタコ焼き居酒屋で7年働いた。大阪は粉ものの本場なので、「冷めても美味しいタコ焼き」を作ろうと味にはかなりこだわった。小さい頃からスポーツが好きで、小学校1年の時から空手を始め、10年以上続けた。中学の時はラグビーの大阪代表に選ばれ、高校はそのままラグビーの推薦で入った。その後総合格闘技とブラジリアン柔術を始め、パーソナルトレーナーの資格も取り、ジムで教えるようになった。日本で最後に出場したブラジリアン柔術の西日本大会では、トーナメントの出場者は自分以外は全員日系ブラジル人であったが優勝することができた。

2018年のブラジリアン柔術西日本大会で優勝


◎空港で感じた不思議な感覚

2014年くらいにブラジリアン柔術を本場で学ぼうと初めてブラジルを訪れた。長旅を終えてサンパウロのグアルーリョス空港から出た瞬間、「何か違う…何だこれ…。オレ、ここに合ってるわ!」と肌で強く感じた。それまで色んな国を訪れたことがあったが、他所では感じたことがない感覚で、その時「絶対ブラジルに住もう」と思った。今でもその感覚が体に染みついているような気がする。滞在時に一緒に練習したブラジル人は皆真剣で、日本人と比べて闘争心が激しかった。

MMAの大会で


◎念願のブラジルへ

2021年、小学校以来の友人の日系ブラジル人が家庭の事情でブラジル(パラナ州ロンドリーナ)に戻らねばならなくなった。コロナ禍で友人も仕事を見つけるのは難しいだろうと自分も資金を出すので日本食レストランを開こうと提案し、その代わり友人には移住の手配を手伝ってもらった。店ではたこ焼き、焼きそば、お好み焼き等、主にB級グルメを提供した。

ロンドリーナに半年滞在した後、サンパウロに移りリベルダーデの飲食店で働くこととなった。そこで1年働いた後、手打ちうどん店「うどん甚兵衛」の店主長谷川洋二さんが準備していた「とりこらーめん」の立ち上げに加わった。

今は朝6時に起きてジムで汗を流してから8時に店に入り、午後の休憩をはさんで店を出るのは夜10時頃になる。週7日休みなく働いているが、ブラジルの空気がこの上なく肌に合っているので仕事をしていてとにかく楽しいし、体力には自信がある。

「これが日本だったらストレスに耐えられなくなって飲食業をやめて違う仕事を探したでしょう」

今は店をオープンしたばかりで、料理を任せられる従業員が育つまでは「お客さんにいつも美味しいものを提供するのが自分の責任」と厨房を切り盛りしている。

醤油・味噌・豚骨ラーメンはサンパウロではお馴染みの味となっているが、鶏白湯ラーメンは今までなかったものだ。「初めて食べましたが美味しかったです」とリピーターになってくれるブラジル人のお客さんも多い。今後長谷川さんの下で鶏白湯ラーメンをブラジルの他の地域に広げられたらと思っている。

鶏白湯ラーメンの試作中


◎第一の人生をブラジルでスタート

日本では若い頃に道に外れた行いをしたこともしばしばあったが、ある時に「オレ何してんやろう?」と真剣に考え、それ以来腹をくくって真面目に生きようと決意した。時間をかけてそれまでの人間関係を整理し、ブラジルで真面目に働き、真面目な人生をスタートさせようと思い移住してきた。そういう意味で「ブラジルが自分にとって(第二ではなく)第一の人生だと思っています」。また、将来結婚したら第二の人生がスタートするのかもしれない。


◎ブラジルについて

「ブラジル人の陽気さは大好きです。また、家族をとても大事にしているのも素晴らしいです。自分もここで家族を築くつもりです。恋愛に関しても愛情表現がストレートで年齢を気にしないので豊かな関係を築けると思います」。
「ブラジルに行くかどうか迷っている人はとりあえず来てみれば良い。空港に降りた瞬間何かを感じるはず。ブラジルでは自分らしく生きることができますよ」。

とりこらーめんの仲間たちと


布施直佐 (ふせなおすけ)
月刊ピンドラーマ編集長

月刊ピンドラーマ2024年9月号表紙

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