
「舌が肥えている」 ポルトガル語ワンポイントレッスン リリアン・トミヤマ 2021年12月号
#ポルトガル語 ワンポイントレッスン
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#リリアン・トミヤマ 文
間違いなく、ベルキオール(Belchior)はブラジル音楽界の中で重要な位置を占めていて、しばしばボブ・ディランと比較されますが、それは以下の二つの理由によります。ひとつは歌詞、もうひとつは、こちらの方が主要な理由ですが、歌を「歌う」のではなく「語る」傾向を持っている点です。2017年に亡くなりましたが、今でも若い世代のミュージシャンや、良質なブラジルポピュラー音楽を楽しむ人々を魅了しています。その影響力は相当なもので、ラッパーのエミシーダ(Emicida)がベルキオールの「Sujeito de Sorte」という曲をサンプリングして、パブロ・ヴィタール(Pabllo Vittar)、マジュール(Majur)と一緒にシングル版をレコーディングしています。実は、ベルキオールの曲の中で私の一番のお気に入りの曲です。歌詞は短いですが強烈です。
Presentemente, eu posso me considerar um sujeito de sorte
Porque, apesar de muito moço, me sinto são e salvo e forte
E tenho comigo pensado: Deus é brasileiro e anda do meu lado
E assim já não posso sofrer no ano passado
Tenho sangrado demais, tenho chorado pra cachorro
Ano passado eu morri, mas esse ano eu não morro
今のところオレは運のいい奴だと思っている
すごく若いけど、自分が健全で無事で強いと感じている
心の中で考えてきた、神はブラジル人でいつもオレのそばにいると
これならもう苦しむことはないだろう
去年オレはものすごく血を流した、ものすごく泣いた
去年オレは死んだ、だけど今年は死なない
「Sujeito de Sorte」を基にしたラッパー・エミシーダの曲に興味があるなら、曲のタイトルは「AmarElo」です。YouTubeに動画がありますので、英語字幕をオンにしてみて下さい。翻訳が素晴らしいです。問題は、私の意見ですが、動画の導入部分が長すぎることです。私のようにせっかちな人は2分39秒のところから動画を観始めて下さい。
「Sujeito de Sorte」のような曲の“アップデート”を批判する人もいますが、私は良いと思います。結局のところ、こういったレコーディングのおかげでベルキオールが再び聴かれるようになり、良い音楽に触れる機会のない人々にまで知られるようになるのです。残念ながらブラジルのような不平等な国では当たり前ことでもあります。
文化的な環境とあまり文化的でない環境の違い、恵まれた環境とあまり恵まれていない環境の違いということを考えているうちに、「舌が肥えている」という表現に思い至りました。ポルトガル語でどう言うでしょうか?答えは、
動詞 ter+bom paladar
です。
例を見ていきましょう。
Ele tem bom paladar. Ele sabe apreciar pratos sofisticados.
(彼は舌が肥えてるよ。洗練された料理の味わい方を知っている)
Maria tem bom paladar. Por isso, eu gosto muito das indicações dela de restaurantes.
(マリアは舌が肥えてるね。だから彼女おすすめのレストラン大好きだよ)
Para ser um chef, é preciso ter bom paladar.
(シェフになるためには舌が肥えていなければならない)
今月もお読みいただきありがとうございました。みなさんに質問があります。
Você tem bom paladar?
リリアン・トミヤマ(LILIAN TOMYAMA)
USP(サンパウロ大学)卒、ポルトガル語学・言語学専攻、ナンシー大学(仏)卒、フランス語学・文学の専門家でもある。
lilidomi@uol.com.br
www.pogotogo.blogspot.com
www.facebook.com/liliansensei
月刊ピンドラーマ2021年12月号
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