コロナ検査はいろいろあります。 開業医のひとりごと 秋山一誠
また今月もコロナの話です。ワクチン接種も世界各地で進み、コロナウイルスも弱毒性に変異し(現時点では) 、感染者数は依然として減りませんが死亡者数は確実に減少してきている今日この頃です。2年前のひとりごとを見ていると、新型コロナウイルス感染症は命の危険があるのでそれ相応の措置が必要!といった論調でしたので、随分と状況が改善したと言えます。現時点では各国の出入国の入国制限もかなり緩和されました。コロナ禍のステイホームで経済が停まってしまったので、各国がいかに経済や社会活動を元に戻すのか躍起になっています。ブラジルに入国するにはワクチン接種証明のみで航空機搭乗前検査は不要になり、日本では入国時の強制待機が(ほとんどの場合)なくなりました。コロナ感染した場合の隔離も初期では3週間までの場所もあったのが、今は最短5日で隔離解除できるようになっています(註1)。この状況で重要になってきているのが、コロナ陰性証明です。コロナ禍が始まった当初は今では有名なPCR検査しか感染の定性検査がなかったのですが、現在は色んな方法・方式の検査が開発され、一番手軽にできる「自己検査」に至っています。
このような現状から、「コロナ検査」の種類や適応、方法や精度(註2)についての問い合わせが増えてきています。それで今回はコロナ検査に関する純粋な医学情報になります。病原体(この場合ウイルス)の検査はその病気になっているヒトに「病原体がいるか」と「その病原体に対する免疫があるか」の2種類に大きく分けられます。前者が「抗原検査」と呼ばれ、後者が「抗体検査」になります。抗原検査は「病原体の存在の調査」と「病原体の量の調査」に分けられ、前者が「定性検査」、後者が「定量検査」です。定量検査のほうが技術的に複雑で、検査器機もより高度のモノが必要になります。単純に言うと、定性検査が「あるかないか」で定量検査が「どれだけあるか」の結果が得られます。
コロナではまだそこまで行ってないのですが、他の感染症、C型肝炎ウイルス感染で例えると、抗体検査で「ウイルス感染の有無」を調査し、陽性の場合、抗原定量検査で「感染の度合い」を調査するといったような運用方法になります(註3)。現在社会活動や保健衛生的に検査に要求されるのは、「コロナウイルスを保有しているか?」であって、抗体を持っていることによって事前に感染したかとか、感染しない(註4)等の証明は要求されていません(註5)。この様な経緯があるので、今薬局で売っている自己テストや簡要テストで簡単に抗原定性検査ができるようになりました。
次の表が現在当地で実施可能な抗原検査とそれぞれの特徴を示します。
『この表を見て意外に思われるのが、簡要テストのほうがPCR検査より感度が高い数字が出ていることでは?一般的にPCR検査がゴールドスタンダード、つまり、標準基準になるものとされているのにどうして感度が低いのかと思うはず。これには理由がある。注意してみると、簡要テストのタイミングが3日目から5日目の3日間のみに高い精度があり、PCR検査は2週間の長い期間で使用可能なため、検出率が低下する。また、特異度もPCR検査のほうが低いが、これも検査器機の校正の仕方などの要因が係わってくる(註9)からなのだ』
抗体検査は血液中にどれだけコロナウイルスに対する免疫タンパクがあるのかを調査します。どのような感染症でも抗体は感染の初期に現れるIgM、M型免疫グロブリンと後半に現れるIgG、G型免疫グロブリンがありますが、新型コロナの場合、M型は感度が低いので使用されなくなりました。したがって現状では抗体検査をする場合はIgGあるいはTotal抗体があります(註10)。抗体検査は検査時点でコロナ感染の有無を決定するのではなく、事前に感染があったかどうか調査するのに有用です。実際にはPCR検査の精度がなくなる感染14日目以降に有症状の患者さんの感染有無や無症状・症状が少ない方の感染の有無の調査(註11)に使用されています。また、ワクチン接種できない方がCOVID-19になった証明(コロナ既往歴の証明)にも利用できます。
『ということで、いろんな検査があるのがわかる。それぞれの特徴を利用して必要な場面で利用するわけであるが、「素人には良くわからない」と言った意見を医療現場で聞くぞ。実際少し専門的なので必要な時にはかかりつけ医に相談するのが良いと考える』
月刊ピンドラーマ2022年7月号
(写真をクリック)
#開業医のひとりごと
#月刊ピンドラーマ
#秋山一誠 (あきやまかずせい)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?