葛西叙江さん(埼玉県出身) 21世紀の日系移民(第3回) 布施直佐 月刊ピンドラーマ2024年7月号
今回はリオ・サンパウロにて長年サンバダンサー・ダンス講師として活動している葛西叙江さんにお話を伺いました。
◎サンバとの出会い
20代半ばに友人が浅草サンバカーニバルに楽隊として参加しているのを観に行って衝撃を受け、「サンバ、爆裂面白そうだな」と思い、友人と同じチームに入った。それまでサンバを含めてダンスの経験は全くなかった。チームの活動を通してブラジルに興味を持つようになった。最初にブラジルに来たのは2003年、リオとサルヴァドールに3か月いた。ブラジルのどこに行ってもサンバに出会えると思っていたが、サルヴァドールではアシェー等が中心で「何でブラジルなのにサンバがないの?」と不思議に思った。
◎リオとサンパウロを往復
現在と違ってサンバの踊り方に関する情報が少ない中、日本でレッスンに通ったり、ビデオ等を見て練習をし、2005、2006年にサンパウロのサンバチーム“ヴァイヴァイ”にパスィスタ(踊り手)として参加。2008年からサンパウロに住み始めた。2009年からリオのカーニバルに出場するためにリオにアパートを借り、普段は月に何回か、10月からカーニバルまでは毎週末にリオに通う生活を8年続けた。リオの練習会場の前のバスターミナルでサンパウロ行きの最終バスに乗り、翌日の朝からレッスンを行うこともあり、体力的にも経済的にもかなりしんどかった。2017年には日本人をカーニバルに参加させるツアーのコーディネーターを始め、それをきっかけにサンパウロに戻った。
◎サンバへの想い
ここ何年かは「次のカーニバルが終わったら日本に帰ろう」と毎回思っているが、「楽しいともう1年いたくなり」「嫌な思いをすると、これでは終われない」と帰国はどんどん先延ばしになっている。長年ブラジルに住みながらの参加経験から外からはうかがい知れないサンバ界の実情にも精通している。「サンバを愛している」「サンバを正しく伝えたい」「サンバを楽しんでほしい」という情熱も強い。サンバやカーニバルはとても深いもので自分も理解しきれていないが、単なる観光ツアーではなくサンバ・カーニバルの文化・歴史的な背景まで含めてできるだけ伝えたい。2025年のカーニバル参加ツアーも行う予定だ。
◎ブラジルでの生活
ブラジルには16年住んでいるが、自分を環境に合わせて変えることが残念だが得意な方ではないので、感じ方・考え方は自分的には変わらず日本人のままでいる。本来は時間等ルーズな質なのだが、それにしてもブラジル人の時間のルーズさ、約束を平気で破る等のネガティブな面には同化することはできない。「何でブラジルにこんなに文句ばっかりなのに私は(ブラジルに)いるんだろう」と思うこともあるが、ブラジルの素晴らしい面も痛感はしている。それでも「サンバがなかったら私は絶対ここにはいない。それは終始一貫変わっていない」。「私の人生は全く成功もしてませんし、しがないものですが、助けてくれる優しく寛大な友人達に恵まれていることだけが私の財産で、とても感謝しています」。
◎ブログ「ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常」
2016年から、ブラジルでの生活に関するブログを始めた。部屋探しにまつわるセクハラエピソードや「ブラジルのどこでも買えるばら撒き土産」、カーニバル参加時にあわや切腹しそうになった話し等、多彩な内容だ。子供の頃からお笑いが大好きで、「ブラジルではありえないことが普通に起こる、それを笑いに昇華してお届けしたい」とういう一貫した姿勢で現在も続いている。サンバのステップだけでなく、叙江さんは言葉さばきの達人でもある。「そんなわけで、もう不動産屋で探すのは諦め、老境に差し掛かった昔気質の刑事のように足で探すことにした」「つたないポルトガル語しかしゃべれず保証人もいない平たい顔の民族に対する世間の風は厳しく」等、ハイレベルのフレーズが連打されるこのブログには熱心な読者が多い。
月刊ピンドラーマ2024年7月号表紙
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