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スピッツ「i-O(修理のうた)」の優しさ


スピッツの新しいアルバム「ひみつスタジオ」が発売されて一週間が経った。

アルバムのレビューはまた今度書くとして、今回は第一曲目である「i-O(修理のうた)」を聴いて感じたことを書いていこうと思う。

最近のスピッツはアルバムの一曲目にガン!とロックサウンドをぶつけてくる事が多くなった。前作「見っけ」にしろ前々作「醒めない」にしろ、可愛さや優しさといった世間のスピッツからギャップのある音、俺達ロックバンドなんすわ、とでも言うようなバンドの音をガン!とぶつけてきていた。

今回も初めてアルバムを聴く時一瞬身構えた。彼らの渾身のガン!が来ると思い、受け止めようとしていた。


前作「見っけ」が発売されて約四ヶ月後、私達は日本中で世界中で目に見えない不安に包まれることになった。
いつどこでそれに感染するのか、感染したらどうなるのか、感染してしまったら大切な人はどうなるのか。恐怖と疑念が霧のように周りを覆い隠していった。
著名人が命を落とし、入院した身内にも面会できず、自由を奪われた檻の中で生活することを強いられ、精神を削られていった。

こわいね、どうすればいいんだよ、いつまで続くんだろう、なんて言いながら私達の心はだんだんと固くなっていたように思う。
楽しいことを楽しくできていた昔を振り返るように、早く元に戻ればいいのにとずっと思っていた。


スピッツが届けてくれた最初の音は、とても優しく、温かだった。
不安な日々を過ごしていた私達が、ゆっくりと立ち上がる力をくれた。

無理に励ますこともせず、気持ちに寄り添って一緒に歩いてくれる、そんな一曲。
それは歌詞や歌い方だけの話ではなく、サウンドでも感じられ、ゆったりとしたイントロやAメロから、サビにかけて緩やかに確実にプラスのエネルギーを発していた。

一曲終わる頃にはもうすっかり気持ちが前を向いていた。不安の霧の中から救われた、そんな気がした。

スピッツはアルバムの一曲目にガン!と音を鳴らすことが多くなった。
そんな彼らがあえて選択した、柔らかくて温かい音。そこにスピッツの優しさを感じた。

これからも、大変なことや辛いことがあるだろう。
でも私達にはスピッツがいる。
それは本当に頼もしいことだ。

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