なぜフィンランド料理はまずいのか?
フィンランドの料理はイギリスよりまずい?
ロンドンとパリがオリンピック誘致を争った2005年、フランスのシラク大統領が「フィンランドの次に料理がまずいのがイギリス」と発言したそう。
怒ったフィンランドの国際オリンピック委員の票がロンドンに流れて、有力視されたパリは大差でロンドンに敗れたとか。
え、フィンランドの料理ってイギリスより不味いの?
と私は驚いてしまいました。
イギリスの料理と言えば、世界でも不味い飯の代表格として知られています(イギリスの皆さんごめんなさい)。
そんなイギリスにフィンランドは負けてしまうのか?!(これもごめんなさい)
他にも、日本人観光客の体験談としてもフィンランドの飯がまずいレビューはちょこちょこ見かけています。
今回はそれに関して、あくまでわたし個人が体験した事と感じた事から考察を述べます。
他にもいろいろな側面から考えられるかもしれませんがが、私の少ない経験からくるものということでご了承ください。
フィンランドの食事はまずくない
まずくないけど例外を除く
正直なところ、例外をのぞいて私はまずいと思ったことはないです。
例外というのは、「フィンランド人もまずいと思ってるもの」。
それは、リコリスのお菓子だったり、ライ麦で出来たドロドロの謎の食べ物とか、発酵臭がするけどほぼノンアルのシーマという飲み物など、日本で言うと納豆だったりクサヤのような昔からあるクセのある食べ物がフィンランドには存在します。
そしてフィンランド人は、それらを好きな人は好きだけど苦手な人も居るレベルなのを知っており、私のような海外から来た連中にニヤニヤして食べさせて反応を見たがります。
ほんとに日本の納豆のような存在。
フィンランドの美味しいもの
特に夏は野菜もフレッシュで新鮮だし、やはりサーモンはとても美味しい。
どんなにロジスティクスが発達したと言っても日本で食べるノルディックサーモンよりも美味しいと感じます。
フィンランドは水道水が飲めるほど水が綺麗で豊かで植物が健康的で安心して食べられるのが嬉しい。
牛や豚、鶏のお肉も生産されていて衛生的で肉質も良いし、ミルク製品も多くてこちらも美味しい。
一般的にレストランに行けば仕事が丁寧で一定のレベルがあります。
パンは日本の文化に似ていて甘い菓子パンが豊富。有名なシナモンロールはカルダモンが効いてアメリカのものより甘さ控えめでこれも美味しい。
ユーロ加盟国なのでヨーロッパ中から、またアジアからも食材が入ってきており質も悪くない。
日本のアイテムも多くて、フィンランドに来る時に「フィンランドでは手に入らないだろうから」と親が老婆心で持たせたがるものも大抵手に入ります。
一体何が問題なのでしょうか。
フィンランド料理がまずく感じる条件
これだけ素材が揃っていながら満足されないということを疑問に思い、少ない経験の中からこれが不味く思う理由なのかなと思ったものが以下です。
フィンランドより食文化が豊かな国から来る
代表的なところで日本では、四方を海に囲まれ肥沃な土壌と四季があり、地域によって豊かな食材と長い歴史からなる調理法があります。
その辺の港町のローカルの安い定食屋に入ったって素朴でもウリになるメニューがあり、美味しくて感動できます。
そんな食生活を送る人たちが、堅い岩に覆われ、季節の大半が冬で限られたものを生産する国に来て、同じ条件で美味しいものを食べようとするのは難しいかなと思います。
フィンランドにもユニークさで戦える食材はありますが、何日も滞在していたら選べるカードは限られて物足りなくなってしまうかも。
フィンランドの伝統料理に期待しすぎ
旅行に行ったら現地特有のユニークで美味しいものが食べたい!と思うのは当たり前なのですが、伝統的なフィンランド料理の代表といえば、
・サーモンのスープやソテー
・トナカイのステーキやハム
・パーチなど川魚のソテー
・ニシンやモトコクチマスなど小魚フライ
・シナモンロール、ライ麦のパン、ジャガイモ
・野生のベリー
etc...
どれも素朴でシンプル!
そしてサーモン以外の素材に馴染みがないものが多くて戸惑う方もいそう。
どれも美味しいですよ、でもワオ!となるようなイタリアやスペインの豪快なお料理や、素朴さが近いところでドイツでもソーセージやビールといったイメージしてワクワクするコンテンツ力に比べたらフィンランドは弱いかなと思います。
それで、何があるかあやふやなまま期待だけ大きくして来てみたら、思った以上の満足度が得られない方も一定数いるのかもしれません。
フィンランドの伝統料理にこだわらなければ、ローカルや輸入食材を使ったイタリアンや中国料理など世界の料理はなんでもあります。
ビーフやラム、海鮮食材は、フィンランドの郷土料理にはあまり使われません。
でも価格や品質を考えると日本で食べたほうがコスパが良いので、わざわざ本場でもないフィンランドで食べなくとも、と考える方もいそうです。
そうなると、フィンランドらしいもの、そしてリーズナブルなものばかりに限っていきやすく、結果としてあまり美味しくなかったり飽きたりするのでは。
フィンランドの物価が高いことによる弊害
フィンランドの物価は日本の価値観から比べたらとても高いです。
500ml程度のペットボトル入りドリンクを何も気にせず3本くらい買っただけで10€超えた時もあります。日本円なら1700円くらいです。(2024年7月某日時点で1€=175円)
お店によりますがランチで安くて13€くらい(約2,200円)、デザートでもつけたら20€(約3,500円)近くなります。(コーヒーはサービスのお店は結構ありますよ!)
その位がこちらでは普通かリーズナブルな価格帯なので、値段がフィンランドで低価格なほど当たり外れは大きくなってくるかと思います。
9€のランチビュッフェという看板を見たことがありますが、安すぎて(それでも約1,500円)ちょっと怖くて未体験です。
なるべく安く済まそうと思っているとあまり美味しい食事の経験ができず、もともと手頃なカフェのシナモンロールやパイが1番美味しかった、となるかもしれません。
また、良いものを食べようとすると奮発して50€、ディナーのコースで70€〜、ちょっと良いところだと100€超えてくるのですが、日本で安くて品質の高いものに慣れてくる私たちからすると、それなりに美味しくても、そのシンプルさもあり、こんなに高いのかと気が引けて味がわからなくなりそうです。
ちなみに超高級店ではなくても300€を超えるコースを持つレストランもあります。
価格に関しては、フィンランドのみならず海外が高くなっている一方で日本が安すぎるのです。
どうしたら日本ではあんなに安く品質が良くできるのかと外から見ると感じます。
その地の食事との向き合い方
私はフィンランドに来て、食事に対して期待するものがありませんでした。
もともと仕事や家族の都合でフィンランドにやって来て、あまり情報もなく、気持ちはまっさらでフィンランド色に染め放題でした!笑
どこの国、どこの地方でもそうですが、そのものを受け入れて、素直に感じるだけ。
美味しいなと思うことも、口に合わないな思うものもあります。
それは日本でも同じで、慣れ親しんだ味と違ったり、好みだったり、育って来た環境でそれぞれ感じ方は違うのかと思います。
私は口にあっても合わなくても、「おもしろい」と思えたんですよね。
例えば、伝統的な魚のパイ包みは小魚と豚肉をミルフィーユにしており、私たちからすると不思議な組み合わせです。
導入として「なんで?」とか「日本の食事では考えられない」というところから入ると、ちょっと抵抗が生まれるのかもと思います。
これに関しては、フィンランドは淡白な白身魚が多いことが分かり、魚料理を豚の脂の甘さでよりリッチに楽しむ知恵なのかと気づくと面白いなと興味が湧きませんか?
それで食べてみて口にあえば良いし、合わなかったら無理に食べなくて、それで良いかな、と。
フィンランドではシンプルに足るを知る幸せがあり、これが心地よいか、物足りないかで分かれ道になりそうです。
でも、それを無理やり心地よく思え、と言うのは酷なのでフィンランドに限らず遠くから遥々やってこれば、やはり期待してしまうし、物足りなかった、満足しなかった、と言う方がいるのは仕方ないのかなと思います。
人間でも合う人合わない人がいるのと同じです。
それでも私は、なんもないと思って来てください、と期待値をゼロにしてもらうよう言っています。
そう思ってくるとなんでもあるし、無駄なものがなく味覚にダイレクトに響くものがあると思っています。
おわりに
フィンランドは国としてまだ若いですが、ここには永きに渡って厳しい自然の中で培われて来た食事の文化や味わいがあります。
日本とは全く違う環境なので、外から来て戸惑うものがあると思いますが、敬意と、まっさらな気持ちで良さも悪さも感じ取ってもらえると嬉しいです。