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エストニア🇪🇪を縦断!〜ワイン🍷を求めて230km🚙〜

奇跡!エストニアにワイナリー?!

始まりは2023年春、タリンのレストランのリストにあったワイン。
「エストニアにワイナリーがあるの?!」
わたしの口から飛び出た驚嘆にオーダーを取りに来たお店の方が笑って言いました。
「そうですよ、マダム。そのワイナリーはタリンからは少し遠いですけどね。」

初めて飲んだエストニアのワインに感動

ランチと一緒にオーダーしたワインはエストニア南部、ラトビアとの国境にある地域、ヴァルガにあるワイナリー"Murimäe winery"のもの。
ソラリスという品種の"ブドウ"の白ワイン。
新春の朝露の中で咲く白いお花のような優しい香りがしました。
ナチュール独自の還元香がしましたが許容範囲です(わたしの)。
赤ワインもありましたが、こちらは甘めのベリーのワイン。
「赤のブドウのワインはないのか」、「いやいや白だけでもすごいこと」、また、「そうか、ベリーでワインを作る手があったか」、「そもそもエストニアにワイナリーがあるなんて」、と、知れたのはありがたいことです。

何がそんなにスゴいのか

わたしは日本で長年ワインの勉強をしており、ワイン関係の資格は3つ取得、ワイン会の主催や、日本ワイナリーでの講師、各国大使館の主催するワインイベントで来日したワイナリーと日本のワイン愛好家やインポーターの間のコミュニケーションを取り持つお手伝いなどをしていました。
今は少しワインから遠くなってしまったけど、ワイン(もといお酒全般)への情熱が冷めたわけではありません。

そんなわたしが何をそんなに興奮しているかというと、ワインを作れるはずがない(と思っていた)エストニアでブドウのワインを見つけたからです。
もう少し北にある、わたしが住むフィンランドなら尚更のことで、これらの地域は、冬が寒すぎて食用やワイン用ブドウが育つことが出来ないので、当然ワイナリーが存在すると考えたことがありませんでした。

わかりやすいのが以下のワインベルトです。

ワインベルトとは
一般的に、ワイン用のブドウは『ワインベルト』と呼ばれる緯度帯の国や地域で栽培されています。北緯30~50度、南緯30~50度にあり、年間平均気温10~20℃のエリアの多くが含まれます。ブドウの花の開花から収穫までの時期の日照時間が年間1250~1500時間、年間降雨量500~900mmで栽培に適した条件が揃っています。

酒類専門商社モトックス様のサイトから(https://www.mottox.co.jp/column/wine/winebelt)
ピンクの帯が北半球のワインベルト。フィンランドやエストニアは遠く離れている。

ワインベルト内にある日本の十勝でさえ、冬季はマイナス20℃を超え、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールなどワイン用として一般的なブドウが育ちにくく、北海道の冬にも耐えられる野生のヤマブドウとこれらのブドウを交配させるなど独自の対策をしているのです。

最近は温暖化の影響でこのベルトの位置も変わってきているとは言われています。
とはいえ、1年の半分が冬季の気温であり日照量の少ないフィンランドやエストニアではそもそもブドウが健全に生きるのはまだまだ難しいと思ってきました。

PIWIワインって?

しかし、今回のエストニアの南部のワイナリーではベリーだけではなく、ブドウのワインもあるというのです。
今回いただいたワインに使われている「ソラリス」はドイツで生まれた真菌耐性ブドウ品種(PIWI)です。ワインの素晴らしい風味をもつ欧州ブドウと、病気に強いアジアやアメリカの品種を交配しているもので、他の代表的なPIWI品種で「レゲント」は北海道でも栽培されています。
ソラリスは耐病性だけではなく耐寒性もあるようで、エストニアでも適応することができたようです。

一般的にPIWIはカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった高級ワインからテーブルワインまで一般的に親しまれている品種と違って風味がやや劣る印象や評価なのですが、今回レストランでいただいたワインはお料理にもエストニアの気候にも合って飲み心地の良いワインでした。
この時はヘルシンキから日帰りだったので時間がなく、ワイナリーには行けませんでしたが(港近くのショッピングセンターで同じワインを見つけて購入)、必ずワイナリーへ行くため戻ってくるぞと心に誓ったのでした!

日本のドイツワイン愛好家を唸らせたエストニアワイン

日本でドイツワイン関係者の皆さんとワイン会をしたときに、このエストニアのソラリスを持参しました。
本場のドイツでもソラリス自体は多く作られているわけではないので、飲まれる機会は少なく、エストニアのソラリスには皆さんも驚かれていました。
土地にブドウが対応したからといって厳しい気候条件に変わりはないので、ブドウが健康に実り美味しいワインができるとは限りません。
その過酷な環境の中で、酸味も香りもバランスよい美味しいワインが出来ていたのです。
補糖がされている可能性はありますか、ひとまず細かいところは今は良いんじゃないでしょうか?!

ワインに詳しくうるさい(?)愛好家を喜ばせたエストニアワイン
この日はドイツワインがメインで8本を開けていました!

念願の再訪、エストニアをほぼ縦断!

感動の出会いから1年後の2024年6月、わたしは再びエストニア、タリン港に降り立ちました。
エストニアのタリンはフィンランドのヘルシンキ港からフェリーで2時間半
毎日何十便と往来がありフィンランドから最も気軽でリーズナブルに行ける国です。

他にもグルメあり美しい景観ありと色々とエピソードは尽きないのですが、今回はワイナリー訪問について記します。

Murimäe winery (murimäe veinikelder)へ

さて、ワインボトルに記載されている情報をもとにワイナリー"Murimäe winery"の場所を確認すると「タリンから少し遠い」のレベルではないことがわかります。
エストニアは小さな国ですが、まさか北の端から真南のエリアに行くことになるとは思いませんでした!

ラトビアとの国境にあるエリアValgaの北東にあるワイナリー
ドライブ中に見た草原のなかに佇む鳥
タリンから112Kすぎた!ここまでで半分
天気は曇りがち。延々と続く雲はどこか神秘的です。

ワイナリーへ到着

思っていた通り秘境感はありましたが、思った以上にモダンで素敵な場所でした。
ワイナリーと、レストランが併設されていて、美味しい食事を楽しみながらワインが楽しめます。

ワイナリーへの案内板がみえてきた!
湖を望む
ところどころかわいい小屋が
広々テラスのワイナリーが見えてきた
天気の良い日はお外が気持ちよさそう
おきゃくさん!おきゃくさん!
このわんこたちがワイナリーのマスコットキャラクター
わたしがワインをつくっています。(うそ)

ブドウ畑へ

特徴的だったのが、ブドウは全てハウス栽培ということ。
これは手間がかかりそうだ。
そしてかなり小ロットでの製造で、ブドウの出来が良くない年はそのブドウのワインの販売が見送られるほど不安定なのだとか。
ソラリスのほか、ミュラートルガウやレゲントなどの品種も見かけましたがまだブドウが成長していないか、ワインが作れるほどの成熟した実がついていないようでした。

ビニールハウスがたくさん並んでいます
ハウスの中の様子
ソラリスのハウス
ソラリスのちいさな苗
赤ワインのPIWI品種レゲントがありました
香り豊かな白ワインミュラートルガウ
カベルネ・コルティスはカベルネ・ソーヴィニヨンとソラリスの交配種
育ち盛りのブドウの樹
まだ小さなブドウの実
ドアの前に咲くお花

ビニールハウスの外の斜面にブドウ畑もありました。
でもこれらの樹はテストと景観用に植えているもので、その実はワインには使っていないとのこと。
野外だとブドウの実がしっかり実らず、多少実がついても鳥やワンコが食べてしまうそうです。

湖に面した斜面のブドウ畑。理想的な立地ではあります。
ワイナリーのテラスから見渡せる
テントも見える。キャンプできそう
実がついてるよ!

醸造所へ

6月は醸造シーズンではないので発酵中のワインなどは見られませんでしたが施設を見せてもらいました。
エストニアの天然酵母を使った取り組みなど実験的なプロジェクトが行われているようでした。

成分検査などを行うコーナーもここにある
ワインが入っているタンクも
瓶詰機。手作業で行う
ベリー、ブドウ全ての醸造をここで行う
小型ステンレスタンクがならぶ。スパークリング用のグースベリーワインが入ったタンクが見えます。

ワインテイスティング

主力はやはりベリーのワイン。ブドウのワインも含めテイスティングができます。
カラントのベリーが主だったと思いますが、ブドウの白ワインと遜色なく美味しくいただけたのが驚き。
むしろブドウのワインは果実の未熟さがベリーのワインよりあり、比較するとすこし青く硬く閉じた印象がありました。
それでも上手くまとめて作っている印象で、大変なご苦労が感じ取れます。

17種類のワインがテイスティングできます
コインを入れて試したいワインのボタンを押すと自動で液体か出てくる
ブドウのワインはソラリスとカベルネ・コルティスが飲める
常にワンちゃんがアテンド

レストランで美味しいランチ!

お腹も空いたので評判のお料理をいただくことに。

お料理メニュー
ドリンクメニュー
ワイングラスがかわいい
カベルネ・コルティスのロゼをいただきました
サーモンタルタルとガスパチョ
ご近所のお客さんがちらほら
ビーフステーキ
お魚料理。豆の付け合わせもおいしかった
スイーツもかわいい
足元では人懐っこいワンコが撫でて撫でてと転がって来ます

ワイナリーの様子や取り組みについてはホームページにくわしく掲載されていたので興味があればぜひ見てみてください。

おわりに

ワイナリーからタリンへ戻る帰路は天候も回復して晴れ渡る空が見えました。
フィンランドと同様、緑豊かなハイウェイを行きますが、植物や建物など似ているところもあれば違いもあり、さまざまな発見をしながらのドライブも楽しいです。

やっぱり晴れていると気持ち良い!
電柱のうえで巣作りする鳥

エストニアのワイン作りへの挑戦は素晴らしく貴重な体験ができたと思うと同時に、これはフィンランドでのワイン作りもそう遠くはないぞとワクワクします。
実際、ノルウェーでもその試みも始まっているようで、機会があればこちらも行ってみたい。
北欧ワイン、夢が広がります!

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