楽天の三木谷浩史とソフトバンクの孫正義、真のレジェンドはどっち?
欧米では、楽天の三木谷氏は「ミッキー」、孫氏は「マサ」の愛称で知られています。二人は日本を代表するハイテク業界の大物ですね。英エコノミスト誌にもたびたび取り上げられています。
今年から楽天はモバイル事業に参入し、ソフトバンクの孫正義とのライバル関係がますます白熱しそうです。楽天は「OpenRAN」という新しいモバイル通信技術を取り入れて独自の5Gネットワークを構築する計画を進めており、これが成功すれば日本だけでなく世界の通信業界にとって画期的な出来事になります。
「要するに三木谷氏は、マニアックなソフトウェア設計文化を持つ楽天のようなインターネット企業が、OpenRANを自社の5Gアーキテクチャの中核に据えて、ハードウェアにとらわれすぎている通信大手に代わって高品質で低価格な通信サービスを提供できるということを証明しようとしているのだ。」
"In essence, what Mr Mikitani has sought to show is that an internet firm like his, with a geeky software-engineering culture, can provide a high-quality, low-cost alternative to the hardware-obsessed telecoms giants, using OpenRAN at the core of its 5G architecture."
(英エコノミスト 2020年11月7日号 "Schumpeter: Mickey v Masa"より。以下引用同じ)
5Gといえば中国のファーウェイが先駆者ですが、ファーウェイの機器は中国政府に情報が流れる可能性があるということで、欧米でファーウェイ機器排除の動きが活発化しています。楽天がOpenRANを使ったソフトウェアベースの5Gネットワークの構築に成功すれば、世界の注目が集まることになるでしょう。
OpenRANの仮想ネットワークの技術を使えば、大きな鉄塔を建ててそこから電波を送るのではなく、アンテナ付きの小さい機器をあちこちに設置するだけでスマホが使えるようになるーーのかな。これならコストがかかりませんから、楽天モバイルの料金がうんと安くなるかもしれませんね。
さて、もう一人のレジェンド、孫氏のほうはというと、
「1000億ドルの規模を持ち、急成長を遂げつつあるハイテク新興企業を国際的に支援した "ソフトバンク・ビジョン・ファンド" の名声のおかげで、孫氏は三木谷氏よりも財力があり、知名度も高い。」
"He has bigger money bags than Mr Mikitani, and a higher profile thanks to the audacity of his $100bn Vision Fund, which backed blitzscaling tech startups globally."
「blitzscalling(ブリッツスケーリング)」は新しい言葉です。blitzは空襲とか電撃作戦の意味で、それにscalingがくっついて、企業が信じられない勢いで規模を拡大することを言います。
孫氏はネット技術のパイオニアと言うより、大胆な投資家の印象が強いですね。
「孫氏は、自分は日本の偉大な起業家の一人だと強調しているが、新しい技術を開発したことはない。」
"Although he has a strong claim to be one of Japan’s great entrepreneurs he has never pioneered a new technology."
エコノミストの記事は、国際的に知名度の高い孫正義の陰に隠れがちな楽天の三木谷氏が、これから世界をあっと言わせるすごいことをやらかすかもよ? というニュアンスに思えました。さて、みなさんならミッキーとマサ、どちらに軍配を上げるでしょうか。
*今回取り上げたエコノミストの記事は、こちらのJPPressのページに日本語の全訳が特別掲載されています。興味のある方はぜひご一読ください。