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バイデン大統領の対コロナ経済政策が太っ腹すぎて、うらやましいけど先行き不安な件

~英エコノミスト誌 2021年3月13日号 "Biden's big gamble"より~


バイデン大統領のコロナ対策により、今年1月、アメリカの全国民に600ドルの小切手が配られました。さらに追加の経済対策で、1400ドル(約15万円)の給付金が先月から、一部の年収の高い人を除くほぼ全国民に配られています。なんだかうらやましくなってしまいますね。

そのおかげでコロナ後のアメリカ経済は急速に回復し、来年はパンデミック前よりも景気が良くなるという予測さえ出ているとのこと。アメリカで大きな問題となっている、子供の貧困も半減する見込みだそうです。

*経済刺激策は、企業などを支援するのではなく、裕福でない層の国民に直接お金を配らないと意味がありません。給付金を受け取ったら必ず使ってくれるからです。

しかしバイデン大統領の思い切った経済刺激策は、よいことばかりではないようです。

給付金以外の経済対策として、アメリカの中央銀行は超低金利政策をとっています。現在の日本の金融政策と同じですね。どうやって低金利にしているのかというと、中央銀行が政府から国債を買っています。これも日本と同じです。

経済上理想的なインフレ状態とは、物価がゆるやかに上がって、それに伴って賃金もあがっていくことです。しかし突然インフレが加速したら、物価がものすごく高くなって、わたしたち庶民は明日の買い物に困ってしまいますね。

「昨年適用された米連邦銀行の新たな「平均インフレ率目標」制度のもとで、連銀は過去の不足分を埋め合わせるために、インフレ率が2%目標を上回るようにしようとしている。これは特に望ましいことだ。なぜなら過去十年の大部分における世界経済の問題点は、インフレ率が高すぎることではなくて、低すぎることだったからだ。連邦銀議長のジェローム・パウエルは、最終的に経済がインフレ傾向になるとしても、これも一時的なものにとどまるだろうと述べている。」
"Under its new "average inflation targeting" regime, adopted last year, it is seeking to bring about inflation over its 2% target in order to make up for past shortfalls. That is particularly desirable because, for much of the past decade, the world economy's problem has been too little inflation, not too much. Even if the economy eventually overheats, Jerome Powell, the Fed's chairman, has argued this, too, will be temporary." (英エコノミスト誌 2021年3月13日号 "Biden's big gamble"より。以下引用同じ)

しかしこれは、危険な賭けなのではないかとエコノミスト誌は述べています。

「バイデン氏の景気刺激策は大きな賭けだ。一発当たればアメリカは、日本や欧州があえいでいるような低インフレ、低金利の罠から逃れられる。他国の中央銀行は、連邦銀の新目標を模倣するだろう。大型の財政刺激策が、景気後退に対する通常対応になるのかもしれない。だがアメリカには、多額の負債とインフレ懸念が残り、中央銀行がその信を問われることになる危険性がある。」
"Mr Biden’s stimulus is a big gamble. If it pays off, America will avoid the miserable low-inflation, low-rate trap in which Japan and Europe look stuck. Other central banks may copy the Fed’s new target. Massive fiscal stimulus may become the normal response to recessions. The risk, however, is that America is left with rising debts, an inflation problem and a central bank facing a test of its credibility."

バイデン大統領は、トランプ大統領時代にガタガタになった経済を立て直す救世主としての役割が期待されています。そして将来の選挙と民主党の支持率のためにも、無理をしてでもその役割を演じようとする政治的思惑も透けて見えるような気がします。アメリカが太っ腹すぎる経済刺激策をとることによって世界経済にマイナスの影響が出ないかどうか、今後の世界の経済動向が気になりますね。


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