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世界のグローバル化が終わるとき

現代はグローバル化の時代と言われますが、19世紀には電信、蒸気船、鉄道の発達や関税の撤廃によって、世界のグローバル化はすでに実現していました。しかしそれは、第一次世界大戦でいったん終わりを迎えます。

21世紀になって、アメリカではトランプ前大統領が中国と貿易戦争をしたり、メキシコ国境に壁を築いたりしましたね。現代のグローバリゼーションもいつか終わって、世界の国々が分断し孤立する日が再びやってくるのでしょうか? 

グローバリゼーションの今後を予測するには、19世紀のグローバリゼーションを振り返ってみることが役に立つと、エコノミスト誌は述べています。

19世紀には、グローバリゼーションが進むと「価格の収斂」が起こりました。

「アメリカの穀物の山が欧州の港に押し寄せると、欧州の土地価格が大西洋の向こう岸につられて下落した。アメリカでは土地の実質価格が1870~1913年の間に3倍になり、その一方でイギリスでは60%近くも下落した。」
"As waves of American grain spilled into European ports, land prices in Europe tumbled toward those across the pond. In America, the real price of land tripled between 1870 and 1913, while in Britain, it dropped by nearly 60%."(英エコノミスト2022年2月26日号 "Free exchange: How to avoid a fatal backlash against globalisation"より。以下引用同じ)

そして、労働者の賃金も収斂していきました。

「同様に実質賃金も収斂したが、これは貿易よりも移民に負うところが大きいとされている。19世紀の移民の流れは、近年考えるようなものとはまったく異なっていた。1870~1910年の間にスウェーデンの労働力は、移民がなかった場合に比べて20%減少し、アメリカの労働力は24%増加したのだ。このような流れのせいで労働市場は一変した。1840年代には、アイルランドの非熟練労働者の実質賃金はイングランドの水準の約6割だったが、1914年にはアイルランド移民のおかげで9割に上昇した。」
"Real wages converged as well, although the authors note this owed more to migration than trade. Nineteenth-century migrant flows were unlike anything in recent memory. Between 1870 and 1910 they reduced Sweden’s labour force by 20% relative to what it otherwise would have been, and increased America’s by 24%. These flows transformed labour markets. Real wages earned by unskilled labourers in Ireland rose from roughly 60% of the British level in the 1840s to 90% in 1914, thanks entirely to Irish emigration."

グローバリゼーションには物品や技術や労働力の「distribution effect(分配効果)」があって、それが世界の多くの国に発展をもたらしたように思えます。では、現代のグローバリゼーションの問題点とは何でしょうか?

「アメリカの賃金と中国の賃金の差が縮まったのは、ひとつには中国の技術発展のおかげだ。だがこれは、何億人もの中国の労働者が国際経済に参入し始めたことで、世界中に非熟練労働者があふれてブルーカラー層の賃金が上がらなくなり、富裕国で格差が広がることにもつながっている。」
" The narrowing gap between American and Chinese wages is in part a story of Chinese technological progress. Yet it is also one in which hundreds of millions of Chinese workers began participating in a global economy, making low-skilled labour more abundant globally and contributing to weaker blue-collar wage growth and higher inequality in rich countries."

こうしてブルーカラー層の不満が高まると、国の政策は保護主義に傾くことになります。アメリカではこのような中でトランプ大統領が爆誕したわけですね。

今は多くの国で保護主義や経済的ナショナリズムが優勢になっており、グローバリゼーションは危機を迎えているように見えます。しかし19世紀のように、グローバリゼーションが世界戦争で終わりを迎えるようなことだけは避けたいものですね。

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