ニュージーランド パイロットとしてのキャリアアップ 9
ニュージーランドに限らず、海外でメジャーエアラインにパイロットとして就職するには、ビザが必要になる。就労ビザ、永住ビザ等が必ず必要になる。パイロット派遣会社から各国に派遣される場合は、そのエージェント若しくは、雇い先がビザのサポートをしてくれるので、ただ言われた通りに書類を埋めて提出すれば必要なビザは取得できる。だけど問題は、これらのパイロット派遣会社は、期間限定の仕事で通常は3年~5年更新である。こういったシステムで各国のエアラインを渡り歩くこともできるが、今回のコロナショックの事を考えるとちょっと不安になってくる。景気次第で、自国のパイロットを最優先するのは当たり前なので、自国のパイロットの前に、真っ先に切られてしまう。また労働組合も無いだろうから、派遣社員は厳しい立場に立たされてしまう。やはり、これらの派遣パイロットの仕事も一時的なもので、将来的にどこの国をベースに置くかを、模索していく必要があると思うのだ。とくに取得しているパイロット免許と自分の国籍が違う場合は。
その国のエアラインに期限なしで、フルタイムのパイロットジョブを得るには、やっぱり、その国の永住権等、その国に住む権利と、その国の労働者と同じように働く権利を得ることが必要最低限になってくる。いままでに、特に2000年前後あたりで、たくさんの日本人たちが、海外エアライン就職を狙って頑張ってきたが、この永住権もしくはそれに近い権利を有するビザが取得できず、たくさんの人たちが泣く泣く帰国していった。だから、海外エアラインで働くには、エアラインに就職するまでの飛行経験蓄積、語学能力、文化だけでなく、それらと同時に、ビザの問題を同時に考えていく必要があるのだ!私が、NZに行こうと決めた理由もこのことを考えてたからだ。
では、どんな国でも可能だろうか?
その点でいくと、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、カナダ等、移民で成り立っている国にはこういった海外でパイロットになるチャンスがあると思う。確かに、今では、そういった国でキャリアアップしている日本人パイロット達がちゃんといるのだ。
ではどうしたら永住権を取得できるのか?どういう条件ならOKか?ということは非常に難しい。なぜなら、その時々によって、その国が移民に求めるものが変わってくるからだ、移民など必要ないと政府が決めてしまったら、もう取得できる可能性は皆無だ。基本的には移民として認められるには、その国で賄いきれない、自国民にまねのできない技術を持っていることが必要で、それを自分で証明する必要がある。
さて、ここまで読むと、海外でパイロットになること自体不可能に思えてくるかもしれない。いや、私ならここまで読んで、もうやる気は半減、どこで首を吊ろうか?って気になってくる。だけど、確かにやることは多いのだが、ひとつづつ移民法が定めているものを、クリアしていけば良いのだ。それしかない。だって、ここニュージーランドにいる沢山の移民パイロットたちは皆これをクリアしてきたのだ。私のいるニュージーランド航空にも、私以外に、4人の日本人パイロットがいるし、それ以外の航空会社でもさらに数人フルタイムでパイロットをしている。こうした連中も時間をかけ、着実にキャリアを作ってきた人たちだ。だから、海外でパイロットになろうと考えたなら、長期間でプランを作っていく覚悟が必要だ。エアラインパイロットまで2年とか3年の短期間で考えるのではなく。私は日本を離れて、パイロットを始める前に、最低10年を計画していた。それは本当にそうなったのだ。本当は、ニュージーランドの永住権についてもっと細かく話がしたいのだが、これ以上は移民法に触れてしまうのでできない。今は、インターネットで簡単にその国の移民の条件( Immigration requirements )をどこにいても調べることができる便利な時代である。それを調べていくのも、このコロナショックで、パイロットキャリアを進めることができない間にできる事ではないだろうか?
海外でパイロットになるのは、とにかく時間とパイロット以外に使う労力がかかる。それをスキップして、短時間でパイロットキャリアを積み上げることは不可能だと思う。だから、このコロナショックでパイロット不景気を嘆いているのではなく、それとは関係なく、時間をかけ、今できる事をして、前進していくことが重要だと思うのだ。冬来れば春遠からず、か。そんな事を同時に、今の自分に言い聞かせている。