Flight schools in New Zealand 2
前回のFlight schools in New Zealand 1でFTO提携校の話をしたが、今回はもう少し、掘り下げて書こうと思う。
FTOはニュージーランド国内に4校ある。
International Aviation Academy of New Zealand
Nelson Aviation College
Southern Wings
Massey University
上記の学校はもちろん NZQAで認可されている学校なので日本人でも留学可能な学校である。
コロナ前のニュージーランドは未曽有のパイロット景気であった。世界の航空需要に乗り遅れないように、ニュージーランド航空も急激な業務拡大を短時間で行う必要があった、また、カンタス、ジェットスターも同じく急激な業務拡大で、今までに私が経験したことのないようなパイロット不足に陥ったのだ。
NZ国内でKIWI達がCPLライセンスを取得する割合と、国内でのパイロット需要のバランスが悪くなった。
KIWI達でパイロットを目指す若者は少なかったのだ。だから、国内のフライスクールでは、KIWI学生より、外国人の学生がほとんどで、こういった学生は、全て外国のエアラインに行ってしまい、ニュージーランド国内にはほとんど残らなかったのである。世界的な航空需要の為、特にアジア圏の学生が非常に増えたのだが・・。
なんで、KIWI達にパイロット職が人気がなかったか。まず第一に、金銭的なもの。高校卒業してすぐに90,000$NZを工面できない。基本的にKIWI達は高校卒業すれば、親からの金銭的なサポートはゼロで、日本の子供みたいに大学までサポートできるような家庭はほぼない。90,000$は日本円にすると円高為替の為に非常に安く見えてしまうが、ここに住んでいる人たちから見ると、900万円の価値と同じ。900万かせぐには一体何年かかるか・・・。
第二に、パイロットになるまでのキャリアアップがとても大変で、免許取得したとしても、エアラインパイロットになるには、通常5年から10年程、遊覧飛行や教官職などで飛行経験を積まなければいけない、その間は他の職種と比べると薄給である。また、ライセンス取得にはたくさんの勉強が必要で、苦労と金額、将来の仕事の保証も無い、等で敬遠されてしまっていたのだ。私から見ればどの仕事でも同じだと思うのだが・・・。
ところが、政府がこの状況を受けて金銭的なもを補助始めたのだ、学生ローンを全額パイロット志願者に出すようになったのだ。しかも、資格取得後、仕事がない場合は返す期日を伸ばしてくれる。私が始めたころは、そんなものがなかったので、皆、他の仕事をしながら勉強していた。それだけ政府の援助があっても、国内のパイロット事情は良くならなかった。そのため、一時的に国外のパイロットを雇う方向で考えたのだが、パイロット労働組合が大反対をし、実現はしなかった。
もう一つの大きな壁は、免許取得後からエアラインまで行くのに非常に時間がかかるし、面接を受けられる保証もない。そのため、多額の借金をしてパイロットを目指すことはリスクが高く、敬遠されていたのだ。
ニュージーランド航空が、免許取得後のエアラインパイロットになるまでの道筋を分かりやすく作り、将来不安を解消しようと計画した。それが、500時間まで飛行経験を貯めれば面接に行けるというものだ、(もちろんFTOでコースを始める以前にも、面接があり、それ以降も何度か面接がある。)
以前のニュージーランド航空のパイロットリクルートメントは、2000時間、3000時間以上飛行経験がなければ面接に招待されることもなかったことから考えると、私にはものすごく大きな違いに見えるし、なんだか特別な、自社養成の様に思えてくるのだが、、。因みに私が入社した時は既に3000時間を超えていた。事業用を取得してから10年もかかった。(その間に911事件、SARSなどの航空恐慌があった。)
私のところに来る質問に、FTOを日本の自社養成と同じように考えている人がいるが、全く性質の異なるものなので注意してもらいたいのだ。自社養成であれば、社員として、給料をもらいながら訓練することができるが、FTOでは、社員ではないので給料も無く、自分で訓練費を捻出する必要がある。また、最低でも事業用パイロットとして500時間の飛行経験を積む必要がある。CPL取得までに250時間ほど飛び、卒業後はさらに250時間ほど飛ぶことになるが、その時間付けの部分は全く保障されていない。
日本人でもこのコースに上手く乗れて、永住権の問題さえ解決していれば、良いと思うのだが、そんな人はほぼ皆無だろう。現在のところで、このコースを習得している日本人は見たことがない。
ただし、FTOの良いと思われるところもある。それは日本で言う、新卒とか学歴とか、年齢とか、その人のバックグラウンドが関係ないことだろう。だから、30才でこのコースに乗っても良いし、もっと、あとで入ってもエアラインに行けるチャンスがあるということだ。実際のケースで、一緒に飛んだ副操縦士が、このシステムを使ってきた人で、以前の職種はエンジニアだったが、その後パイロットを目指したという人もいた。彼は始めた時には年齢は既に40台である。
では、FTO出身でないとニュージーランド航空に入れないか?若しくは卒業生は有利なのか?というのは前回にも書いたが、全く関係ない。どこの学校だろうが、どこの国で免許を取ろうが、ニュージーランドライセンスに書き換えた後であれば、だれにでもチャンスがあるし、平等に面接を受けられる。日本の様に、どこの大学出身とか、年齢だとか、性別とか全く関係ない。チャンスは皆平等だ。
FTOで訓練すればエアラインスタンダードなので箔がついて、なんだかすごい上等なイメージがあるが、私から見ると、必要ないものに思えることがある。
FTOでのシラバスは、確かにニュージーランド航空のパイロットトレーニングのシラバスでやっているのだが、セスナの様な小型機と乗客を何十人も乗せて飛ぶオペレーションには、あまりにも違いがありすぎるので、私個人から見るとあまり訓練初期でエアラインスタンダードでガチガチに縛り付けるような教育はかえってマイナスだと思うのだ。個人的には、もっと飛行機のベーシックなところ等(ターンだとか失速だとか)を学んだりした方が将来的には役に立つと思うし、もっと飛行機自体を楽しんで飛ぶべき時期だと思うのだ。仕事で飛行機を飛ばすと色々な制約がいやでも出てくるので、今後のモチベーションを上げるためにフライト自体を楽しむことが重要だと思うのだ。ニュージーランドの空は非常に美しく、ぜひその美しさを見てもらいたい。視程が90km以上ある。(今考えると、この小型機でのトレーニングフライトが一番面白かった。もちろん将来が心配な時期であったのだが。)
なんでこんなくだらない話をしてるか?
それは、今後、5年以降に、ニュージーランドはbaby boomerの大量退職が控えている。今までの話は、急激なパイロット需要に対して、パイロット景気となったが、今度は短期間の退職者増加に伴ってパイロット景気が来るのではないかと私個人では思っているのだ。今、こうして、世界恐慌でいるうちにでも、少しでも前に進むことを勧めたかったのである。
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