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ニュージーランド パイロットとしてのキャリアアップ 11

ハッキリ言っておくが、ニュージーランドで働く日本人パイロットは私だけでな無い。ニュージーランドは小さい国で、日本から遠く離れた国だけども、現在、私の知っている限り、ニュージーランド航空に5人、他の会社に2人、パイロットとして働いている日本人たちがいる。彼らは全員、ニュージーランド永住者であり、私と同じように皆パイロットになることを夢見て日本から来た。ニュージーランド在住の二世ではない。今現在の状況は、私がニュージーランドに初めて渡航した20年前では想像もできなかったことだ。なぜかって?それはその当時、まだ海外で日本人がエアラインパイロットになるなんてことは聞いたことがなかったからだ。いや、その当時でも、色々噂として、どこそこの国のエアラインで働いている日本人がいるとかは聞いたことがあったのだが、まだインターネットなどの情報も少なく、口つての情報とか、雑誌などの情報はとても少なかった時で、大体の情報はでたらめな情報が多かった。それでも、未知の世界に対する期待感は、日本でパイロットを目指すことができなかった私にはとても大きく、魅力的であったのだ。

私や他の全ての日本人パイロットたちも、他のKIWI(NZ人)と同じように、小型機の教官や遊覧飛行などして飛行時間を貯めるなどしてキャリアアップしている。誰一人として最初からNZの就労ビザや永住権を持っていたわけではなく、また、最初から飛行経験があったわけではない。

正直にいうと、NZに渡航する前は、永住権を取得し、ニュージーランドでエアラインパイロットになるという目標は、とてもつもなく困難な事だと感じていた、いや、むしろ「不可能な事」と感じていた。

だってそうじゃないか?、客観的に事実をみても流石に厳しい。

1,日本人であって、日本でパイロットになれず、NZでNZ人でもないのにNZのエアラインパイロットになる!なんて馬鹿げた、無謀な事だ。大きく自分の能力からかけ離れていることだ。これは私の周りの日本人がずっと私に言い続けてきた言葉でとてもネガティブな良いアドバイスだった。

2,英語もできない。大学の受験英語くらい。現地人と同じくらい英語ができなければエアラインにいくなんて夢のまた夢、、これも周りの日本人がくれたありがたいアドバイスである

3,海外にも行った経験がない、たったの一度も、飛行機にも乗ったことがない。NZの永住権もましてや、就労ビザも持っていない、

4,金も、知り合いもいない、

5,過去に誰一人としてNZで日本人でエアラインパイロットになった人は皆無。

「不可能な事」は渡航する前には山のようにあった。そんな状況下で私はこの道を選んでしまった、いや、それしか私には、方法がなかった。他のNZにいる日本人パイロット達もそれぞれ違うと思うが、似たような難しい境遇からスタートしたと思うのだ。ただ、共通していることはパイロットになりたいという強い思いがあったことと、長い年月をかけ前に進む辛抱強さがあったのではないだろうか。

私の場合は、日本でパイロットになることをあきらめた時点で、海外でパイロットとして残る道しかなかった。なので、思い切ってNZに来て、年数をかけ、少しずつ前進するしか方法がなかった。本当に少しづつだ エアラインに行くまで免許取得から10年もかかった。しかもその間は、自分のやりたいパイロットの仕事とは全く関係のないことばかりである。でも、そうして少しずつ前進しているうちに永住権、英語等、NZに渡航する前に感じていた「不可能な事」というのが、可能になってきたような感じである。これは時間をかけねば解決できなかったことだと思うのだ。

この「不可能な事」を良く整理して考えると、根本的にはたった一つではないのか?と思った。

物理的に「不可能な事」は、「日本にいながらNZでパイロットを目指すことはできないことだ。」今はインターネットが普及し色々な情報が、現地にいなくても集められる。でもそれは情報だけだ。パイロットとして働くには物理的に現地にいなければできないし、ましてや永住もできない。

英語や、お金、経験などは、勉強したり、働いたりと自分次第の努力である程度解決できるものだと思ったのだ。だからとにかく、NZでパイロットを目指そうと考えた時には、真っ先に飛行機のチケットを探し、まずは現地に行くことだと思った。しかし、どこの国でも、外国人が、好きなだけ滞在したり、就労することはかなり制限されている。NZでも同じだ。それは当たり前のことだが、現地人の職を奪ってしまうからなのだ。そんな単純な事も、最初の頃には分からなかった。でも現地に来て仕事を探したり、NZでの滞在方法、就労方法を模索している間にもっとたくさんの色々な事が見えてきた感じだった。それは日本で生まれ育った私が、NZ人になるには必要な事だったと思うのだ。

英語も同じだ。「NZのエアラインで働くには、現地人と同じくらい英語を使えないと不可能だ」と、周りの日本人にアドバイスを頂いた。だから私は、最初の頃、自分の能力と照らし合わせ、英語は「不可能な事」と勝手に思い込んでしまった。

違う!問題点を見間違えていた!

そもそもパイロットになるために必要な英語で、英語が目的でNZを目指すわけではない。英語は手段であって、目的ではない。あくまで目的は、パイロットになることだ。だから、そんなに「不可能な事」ではないんじゃないか?と時間を追うごとに感じてきたのだ。実際、現地で英語は、否応なく使っていく。だから、可能な限り、KIWI達の中に自分の身を置いて英語を勉強してきた。そうして感じた事が、NZでパイロットになるのに必要な英語力というのは、きちんとコミュニケーションできる英語力が重要で、現地の人と同じように話せる英語力であったり、TOEICで980点を取ることではないのだと感じてきた。これは英語が第二言語にもなっていない日本では「不可能な事」だと思う。

だから、最初にとても不安を感じていた、海外(NZ)でエアラインパイロットになるうえで「不可能な事」ということは、実はそんな大した問題ではないと今は思えるのだ。

「不可能な事」は「物理的な日本からの距離」以外はほとんどないのだが、10年という長い年月は、最初の頃に想像しているより、辛く、辛抱が必要だと今は思う。

10年の間で、私は、頻繁にこう思ってしまったからだ。

「自分にはできないんじゃあないか?」

「ああ!もう漏れは30半ばだ!周りは結婚して家庭もっていい仕事してるのに、未だに独り身で、安い給料で、不安定な夢ばかり追ってる」

「日本に帰って、なんとかしてお金を工面し、日本のライセンスを取得し、エアラインに応募した方が良いんじゃないか?だって、自分の学生たちのほとんどは、そうやって現在、エアラインで働いている、それに比べて自分はまだ、小型機のインストラクターで、、、」

だんだんと自分がとてつもなく小さな存在で、人生の落伍者に感じてしまう期間があったのだ。どういうわけか、自分の周りと比較してしまいネガティブに思ってしまう。特に、自分たちの教えた学生がどんどんと日本のエアラインに就職している事を知りながら、日本から学生を呼び込むために、パイロットではないマーケティングの仕事だとかしなくてはいけない状況が、自分自身がエアラインに行くまで続くのだ。これはとてもつらく辛抱が必要だった。だから、最初、「今までにNZで、エアラインパイロットになった日本人はいない」という事実は、「目に見える目標人物」と比較できないので、どうしてもパイロットではない友達、知り合いだとか、自分の教えた学生達と自分を比較しがちになってしまうのだ。この時期は、日本のエアラインへのキャリアステップとNZのエアラインへのキャリアステップは全く異なることを身をもって強く感じた期間であったのだ。

下の動画はニュージーランド航空のKIWIパイロットが感じているいる事なのだが、私の様な日本人が感じるハードルとは少し違うが、彼らも長い年月をかけてキャリアアップしている。そのことを感じるだろうか?

今思うと、本当にNever stop Dreaming だと思うのだ。



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