TMR編集室月報23.06|弦のふるえ、金属のうねり
TMR/音の巡礼のこと
20年目のお寺の音楽会 誰そ彼でした。
アルゼンチンからJapan Tourで来日していたギタリスト、フェルナンド・カブサッキさんが光明寺にて、箏の今西紅雪さんと素晴らしい演奏をしてくださった。美しいたそがれ時。二人が奏でる弦の音は、本堂に集まる多くの人々の心を震わせた。
幕開けのDJは今西さんのご紹介で、若き選曲家 Kaede Adachi さんが、”邦楽縛り”(JPOPではなく和楽器の)という興味深いスタイルで務めてくれた。
自分が休憩時間にかけたいと持って行ってた数枚のレコードのうち、2枚がかぶるという奇跡的なシンクロも嬉しく、ぜひお友達になりたいと思った。
「音の巡礼」コーナーのお経は、光明寺ご近所の曹洞宗 大安寺 久松彰彦さんにお勤めいただいた。
演奏開始前の雰囲気を整える効果があったと思う。
そして、ラストはお馴染み「讃仏偈」を木原祐健さんのリードでお勤めした。会場みんなで声をだして、とても気持ちが良かった!
これでこそ誰そ彼だなあ、と思いながら20周年を心の中でお祝い。
打ち上げでは、カブサッキさんに2002年の初来日よみうりランド公演をみてましたよ〜とお伝えすることができた。
山本精一さんのことを、言葉は交わさないけど演奏で通じ合うブラザーだ、って言ってたのもグッとくるものがあり。思わず「Boredoms is my idol!」って言ったら、YoshimiやATRとも演奏しているよ、なんて教えてくれた。
今回も、演奏と読経と交流が誰そ彼の真髄であると感じられる良き一夜となりました。
ご縁を紡いでくれた今西紅雪さんと、この場を一緒につくりあげてくれているスタッフのみんなに特大の感謝を!きてくれたお友達もありがとう〜
お寺のこと
誰そ彼を無事に終えて、富山へ。
初日はずっと行ってみたかった黒部の善巧寺さん。雪山俊隆さんの地域での取り組みを取材。善巧寺さんといえば「お寺座Live」というライブイベントを長らく開催されていて(現在は休止中)、お寺の音楽会を主催する同志としてとても親しみを感じていた。
これまで噂に聞いていた本堂の素晴らしい天井絵やBarカウンターのついた門信徒会館(!)に想い馳せていたので、ついに現地を訪れることができて嬉しい。
次回はBarカウンター内のDJブースでレコードをかけながら、お酒を飲みたいなあ。
翌日は縁あって、高岡にあるシマタニ昇龍工房へ見学。
せっかくの機会なので高岡・黒部で音に興味が深そうなお坊さんにお声がけしたところ、既に四代目 島谷好徳さんと仲良しの方もあり、ワイワイ楽しく皆で音を聴きながら、おりん(磬子/大金/経金)の奥深き音世界に浸った。
シマタニ昇龍工房ではちょうど新しいコンセプトのおりんを販売し始めたばかり。お寺での用途だけでなく、お部屋でのリラックスやヨガ・マインドフルネス瞑想のためにも使えそうな小さめサイズのおりん。
小さいながらそこには昇龍の職人さんの技術が詰まっており、その澄んだ響きにお坊さん達も驚き「欲しい〜」という声があがっていた。
例えば、葬儀会館備え付けの磬子/大金/経金の音がよくないことが多々あるらしく、小さめを持ち歩いておきたいという、そんなニーズもあるようす。
新しいコンセプトのおりんにご興味のある方はシマタニ昇龍工房のWebサイトや、Instagramをご覧ください。インスタでは音を聴くことも。
一行はそのまま高岡の善興寺さんへ。
こちらも、住職の飛鳥寛静さんが中心となり長らく音楽会を続けており、ずっと訪れたかったお寺。
ちょうど先日の誰そ彼と同日の 6/17 に行なわれた大法要では二階堂和美さんが7年ぶりに歌いにこられたばかり。誰そ彼と日がかぶらなければ、僕もニカさんの歌を聴きに駆けつけたかったところ。
また、こちらと神谷町・光明寺は親戚関係というご縁があったり、多数の棟方志功作品や大法要のお荘厳など見どころ盛りだくさんでまったく時間が足りないほど…。またゆっくり訪れたい。
そして善巧寺さん「お寺座Live」も、善興寺さんの音楽会「天人ともに」も、どちらも「誰そ彼」に刺激を受けて始まったと言ってくださるのが本当にうれしい。やっててよかった!としみじみ思う。
富山でお世話になった皆さまありがとうございました!!!
取材記事|浦霧慶哉さん(佐賀県 浄土真宗本願寺派 正徳寺)
『月刊住職』2023年6月号 講座(54)では、佐賀県白石町の本願寺派 正徳寺の浦霧慶哉さんとお話しした。
パッと閃いたアイデアを直感的に形にしながら、その意義を深めていく浦霧さん。日本人のお寺にお参りする心を、例え形が変わったとしても継承していこうとする姿勢に感服。
浦霧さんの車に乗せてもらって、カーステから流れる斉藤和義の歌を聴きながら白石町を案内していただいたのが、なんかすごく良かったなあ。
取材協力ありがとうございました!
取材記事|福岡県北九州市・浄土真宗本願寺派・西法寺・西村さんご家族
2月に現地取材をして『地域寺院』2023年4月号に掲載された記事を、未来の住職塾noteに転載させてもらいました。
25年前、檀家さんと一緒にお勤めするようになり、現在は親子三代での朝勤を毎朝続けていらっしゃる西法寺さんのご家族のお話し。
味の巡礼
・鳥忠(大塚)
・のみたや(築地)
・五城目(目白)
・大衆割烹 大しま(三島)
・ビストロ POPCORN(高津)
・ピカイチ(今池)
音のこと
6/11、フェルナンド・カブサッキ東京公演初日@神田ポラリスへ。
勝井祐二さんのバイオリンの音色と、寄り添い合ったり距離をとったり付かず離れずの衛星のように美しく響き合う。時折顔を出すナイーヴなメロディと歌声に何度も泣きそうになりながら、アンコールまでの約2時間を堪能した。
終演後、握手をしてくれたカブサッキさんの手はおっきくてあったかかった!笑顔も素敵で。
写真は、会場先行販売していたカブサッキさん久々のアルバム「Deeper Man」。ジャケットが良すぎて思わず買っていた。京都の鴨川沿いかな?と思ったらやはりそうらしい。
Bob Dylan新譜 「Shadow Kingdom」2LPのDisc2裏面は溝がなくて、代わりにうっすら模様がはいってる。こういう洒落心がスキ!
アーリー・ディランの楽曲を、21世紀の再構築おじいちゃんが圧倒的なかっこよさで奏でてる。
「Folkocracy」ルーファス・ウェインライトが、自身の50歳バースデーを祝って憧れのミュージシャンを招いてフォークソングをカヴァーした作品。Van Dyke Parks、David Byrne、ANOHNI、Andrew Birdなどツボを突かれまくりの人選。Folk Classicな楽曲からNeil Young、ハワイアンまで。耳がとても幸せ。
6/27、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館、展示「吉村弘 風景の音 音の風景」へ。
2020年のコンピレーション『Kankyō Ongaku』で知ったにわかファンなので、吉村弘WORKSの幅広さに驚いた。
特に氏が各地に残したサウンドロゴの数々。今も使われているならば、その風景の中でこそ聴いてみたい。会場で販売していた『Four Post Cards』というCDはまさに、神奈川県立近代美術館のために作られたサウンドロゴがおさめられている。
ここ数日は『Four Post Cards』と、Corneliusの新作『夢中夢』を交互にリピートしてて「なんか似たところがあるなあ」と感じていた。
それでミュージックマガジンの小山田圭吾インタビューを読むと、『夢中夢』は吉村の音楽に大きく影響をうけているとのこと。
偶然のタイミングに過ぎない出来事だけど、文化の流行ってこうした不思議なシンクロニシティの重なりによって起こってきたのだろう。
展示では、タージマハル旅行団とのコンサートのチラシなども出ており、そういえば小杉武久のサウンドインスタレーションも神奈川県立近代美術館でみたなあと思って探したら、当時のパンフレットやチケット半券が出てきた。本館か。
日付をみると2002年!21年前、、、
フェルナンド・カブサッキ初来日も2002年で、小杉武久サウンドインスタレーション@神奈川県立近代美術館も2002年。
20年の巡りで私的音楽トレンドの只中にいるようで楽しい。