TMR編集室より| 22.05.05 僧侶たちのフィールド・レコーディング
5/1〜2にかけて山梨へ出張していました。甲府駅で出迎えてくれたのは、Temple Morning Radioの第1回ゲストだった横山瑞法さん。
法源寺の宿坊計画
瑞法さんは、住職をつとめる南アルプス市にある法源寺から徒歩2分の空き家を活用して、宿坊をつくる計画を進めています。改修中の家屋を見学させてもらいました。
丁寧にこだわって作られた家屋だということがよくわかり、すごく大切に暮らしていらっしゃたんだなあと感じられます。
ここに若い人たちの感性で内外装などをリノベーションすることで、どんな素敵な宿坊になるのかが楽しみです。
すぐ近くにある法源寺で写経体験やTemple Morning(朝掃除の会)にも参加できる宿泊プラン等も想定しているそうで、完成が待ちきれません。
「ここに移住したい人も出てくるのでは?」とお聞きしたところ、例えば移住検討者のための長期滞在プラン等もありかもしれませんねと仰っていて、移住者のための窓口というのもお寺の果たせるひとつの役割だと思いました。
宿坊計画の経過については、法源寺のFacebookページでご覧いただけます。
法源寺のお経録音環境
宿坊見学のあとは法源寺へお参り。写真ではよく見ていた境内へ、はじめてお邪魔する感動。ベンチもあった!
TMR後半の「音の巡礼」コーナーでよく流させてもらっている、瑞法さんのお経が録音された本堂にもあがらせていただきました。
お経録音時の工夫についても話してくれました。
写真中央に見える木鐘(もくしょう)と呼ばれる、日蓮宗の木魚が強めの音なので、そのまま叩くと音が割れがちです。そこで木鉦には手ぬぐいをかけてその上から叩くようにしているとのこと。
確かに自分も、日蓮宗のお経音源を編集する際、木鉦の音をマイルドにするイコライジングを施しています。録音段階で工夫をしてもらえるのはありがたい。
マイクを木鉦から離すという方法も考えられますが、するとお経の声もマイクから遠ざかってしまうので「ピンマイクがいいのかな?」とか、「じゃあ鳴り物系を録る別のマイクも立てて」とかついつい機材が増える方向性に、、、。
そもそも「音の巡礼」コーナーで流しているお経音源のほとんどは複数のマイクをつかって録音されたものではなく、それぞれのお寺のお坊さんがご自身で録音して送ってくださっています。例えばスマホや簡易的ICレコーダー等で録っていただいた音声データです。その生々しいライブ感ある音を、音割れなどしない程度に遠藤がちょっとだけイコライジング調整をしてお届けしているもの。リスナーからは「背景の蝉の鳴き声がいい」とか「水の音が入っていて気持ちいい」とう声もあり、季節感やお寺の雰囲気も感じ取ってもらいたいという思いがあります。スタジオで録音されたようなクリアな音を志向してはいないのです。
本堂での録音もフィールド・レコーディング?
柳沢英輔さん著『フィールド・レコーディング入門 - 響きのなかで世界と出会う』には、こんなことが書いてありました。
これを読んだときに、「音の巡礼のお経音源は、お坊さんたちによるフィールド・レコーディングなんだ!」とわかったのです。
読経中にピンポンが鳴って来客があってもいい。お寺の猫の鳴き声や、お子さんが本堂を走り回ったっていい。とあるお寺のその日の読経の記録。お寺という「場所の固有性」ももちろんですが、思考家の佐々木敦さんが仰ったという「機会の固有性」の観点から、お経のフィールド・レコーディング音源を蒐めていくのが「音の巡礼」の一つの目的であると感じました。
瑞法さんは優しいので「色んな種類のお経音源を送りたいんですけどね」と言ってくれますが、同じお経を詠んでいてもその日・その時間の環境は違うので、「機会の固有性」からするとまったくの別物です。「同じお経でもよいので、また送ってください」とお伝えしました。(各宗派の色んなお経を蒐めたいという目標もありますが・笑)
瑞法さんのお経は以下のページで聴くことができます。
そして、この記事を読んでいる、全国のお坊さんにお願いです。ぜひ、ご自坊の本堂で気軽にお経をフィールド・レコーディングしてみてください!
録音したら、以下のWebフォームより音声データを遠藤まで送っていただけたらポッドキャスト「Temple Morning Radio」内「音の巡礼」コーナーにて配信させていただきます。