クリスマスがない家の子
我が家にはクリスマスがなかった。一回もサンタさんは来なかった。ツリーなんてもってのほかだった。
なんでかって言うと、父親が外国人でそこそこ敬虔な仏教徒だったから。蚊も殺さないし、変なハエとかが入ってきたらラップとかトイレットペーパーの芯をうま〜く使って外に逃すのだ。殺生がダメだからね。
「うちはキリスト教じゃないでしょ。クリスマスやるなら、花祭り(なんか4月くらいにある仏教のお祭り)もやらないと。やらないでしょ?花祭り。」
「周りの子はクリスマスプレゼント貰っててずるいって、普段からあなたには色んなものあげてるでしょ。トータルだとあなたの方が多く貰ってるよ。」
とか言われ、花祭りもやるもん!クリスマスにプレゼントが欲しいんだもん!と反論してもあーだこーだ難癖をつけられ結局我が家にサンタが来ることは一度もなかった。
我が家は仏教だからクリスマスはないの、とかいう割にはお正月は毎年絶対初詣に行ったし、両親の結婚式は神前式だったし、色々謎だった。何故かクリスマスだけがダメだった。
母親はそんな私を可哀想に思ったのか、父親が出張か何かで家にいなかったある年のクリスマスにこっそりケーキを買ってきてくれた。たしかマンゴー味みたいなので、全然クリスマスって感じのケーキじゃなかったけど、その味は今でも覚えている。
別に父親を恨んじゃいないけど、自分の子供にはクリスマスはしてあげたいなあ。サンタさんになりたいなあ。とりあえず今年は珍しく母親と2人きりのクリスマスなので、あの店のマンゴー味のケーキを買おうかな。