noteを書く時のお供にワインを飲むなら赤ワインだね。
地下鉄でスマホを触っていると、だいたい決まった駅の付近で電波を拾わなくなる。
昨日はいつものように帰りの地下鉄に乗り込んですぐ、noteのスマホアプリで記事を書き始めた。「書くぞ!」と意気込んで始めようとすると、逆にその気分になるまでに時間がかかってしまうから、「地下鉄に乗った」ことをトリガーとして、地下鉄に乗り込む=noteを書き始めるという制約にしてみた。
書いてみて思ったけれど、トリガーというのは一般的な人に受け入れられるだろうか?よくITエンジニアの中ではプログラムを書いている中で、「あることをきっかけとして決まった動きをさせる」みたいな時に要約として使う言葉だ。
ピストルのトリガーだから、なんとなくイメージは伝わるよね、きっと。
・箸を持ったら食事を始める
・歯ブラシを持ったら歯を磨き始める
・コントローラーを持ったらゲームを始める
・ベッドに寝転んだら就寝する
・トイレに腰を下ろしたら・・・
みたいな、まぁそんなこと。それと同じように地下鉄に乗り込んだ瞬間にnoteを書き始めたんだけれども。
例の電波の悪い駅に差し掛かったところで、アンテナの横がクルクルと回り出した。表現が雑で申し訳ないが、伝わるよね、きっと。
とにかくクルクルが止まらない。どこまで行ってもクルクルクルクル…。
noteの記事は書き続けられるんだ。書けているからあまり気にせずひたすら書いていた。
そうこうしているうちに自宅の最寄り駅についてしまった。20分強の時間があるにもかかわらず、日記を書き上げられないとはまだまだ修行が足らないな。
でも書き上げられなかったものは仕方がないので一旦「下書き保存」ボタンを押す。
あれ?おかしいな。
いつもならすぐに「お疲れ様でした!」みたいなねぎらいのメッセージボックスが瞬時に出てくれるのに、その時は反応がない。
投稿できないようなセンシティブな内容を書いたつもりは一切ない。むしろいつもよりもどうでもいいような記事を書いた気がしていたのに。
noteアプリは一向に保存してくれる気配もなく、例のクルクルが回り続けていた。
そのまま放置をしていたのだが、帰り道でまたチラリとスマホをみると、まだクルクルしている。でも、いつもは記事を書いている間は優しいnoteさんが「下書き保存」を押さなくてもそっと保存しておいてくれているので、そのご好意に甘えていったん、アプリを終了させた。
家についてから、続きを書くために今度はパソコンからnoteのサイトを開く。いつものように記事一覧にはちゃんとさっき書いた記事のタイトルが載っている。
さすがはnoteさん。仕事が固い。信頼のnoteアプリだ。
そしてあともう少し書き足して、その日の日記を書き上げようとワインを片手に開いてみた。
ぼくの記憶よりもはるかにキレイな記事だった。
キレイに、真っ白だった。そこには、noteさんからの心ばかりのメッセージが薄い文字で書かれている。
ご自由にお書きください。
書いたよ。確かにぼくはここに日記を書いた。なんなら結構な量を書いていて、あと数行で完成させるつもりだったんだ。
確かに、ぼくはポンコツだし、記憶はいつも崩壊している。それに加えて昨日は慣れない残業で、無い頭はパンク状態だったんだ。そんな状態で本能だけで書いていた日記。確かにぼくはそこに日記を書いた。
あれはぼくの錯覚だったのだろうか?夢だったのだろうか?妄想だったのだろうか?
いや。記憶力のないぼくだけど、書いた内容は覚えている。昨日の記事は無い頭でそれなりに考えた末に出した答えを記した日記だった。
なのに、「ご自由にお書きください。」
なんて、書いたことをなかったことにする機能があったっけ?
ちょっとばかりぼくの頭は混乱している。疲れているせいかもしれない。
そうだ、noteの記事を書く時のお供に用意していたワインをちょっと飲んで、一旦落ち着いたら見直してみよう。きっと、下書きはどこかに残っているんだ。見落としているだけ。
ワイングラスを口に当てて、ほんの少し、口に含んだ。コンビニで買ってきた安物の「ビオワイン」。頭と同様にワインを味わうための味覚も大して持ち合わせてはいない。
でも、おいしかった。
疲れた脳にもワインのアルコールが浸透して、落ち着きを取り戻す。
さあ、もう一度、noteに保存されているはずの下書きを開いてみよう。
タイトルは、ちゃんとそこにある。
冷静に、間違えないように書いたはずのタイトルをクリックする。
ご自由にお書きください。
わかったよ。ご自由にね。ご自由に。
ぼくが地下鉄の中で書いた記事は、きれいサッパリ、真っ白な記事へと生まれ変わっていた。キレイだ。実にキレイ。
ぼくが書いた「なんのこっちゃ」な記事よりも、薄い文字でnoteさんが書いてくれた言葉の方が粋であることは確かなんだ。
真っ白になった記事を見て、手に持ったワイングラスをもう一度口につける。
ゴクリと飲み込んだそのワインは、
白ワインだった。
じゃあ、またね。
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