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エリアアーキテクトの設計思想

僕の設計思想の根幹にあるのは「自由であれ」という理念だ。これは、1/1のスケールで考えることで、気に入らなければ何度でも作り直せばいいという考え方を指している。自由に試行錯誤しながら、必要な変化を柔軟に取り入れていくことが重要だ。そして、材料においても「ありものを使う」というアプローチを大切にしている。すでに手元にあるものをどう活かし、どのように形にするか。それこそが創造の出発点であり、その過程で「人を信じる」ことが重要な要素となる。

人を信じるということは、一緒に作り上げていくという意味であり、設計には他者の参加と協力が欠かせない。信頼があれば、みんなで自由に遊びながら、時には少し逸脱した形を作ることもできる。逆に、人を信じずに安全な選択肢ばかりを選んでしまうと、デザインは無難でつまらないものになってしまう。だからこそ、信頼をベースにした共同作業こそが、自由と創造性を支える大事な要素だ。

「みんなで作る」というアプローチはとても繊細だ。「みんな」とは誰を指すのか、慎重に定義する必要がある。例えば、スターバックスは一見「みんなで作った」空間だと言える。そこを使う人、設計した人、運営する人、それらが集まって作り上げたものだ。しかし、「みんな」が多すぎると、デザインは均一化し、個性を失ってしまう。だからこそ、町づくりにおいては多くの意見が交わされる中で、誰かが引っ張る役割を果たすことが不可欠だ。すべての意見を尊重しつつも、最終的には誰かがリーダーシップを持って決断し、方向性を示す必要がある。この「みんなのデザイン」という概念が、僕の設計思想の中心にある。

さらに、設計においては「自由と規律」のバランスが重要だと考えている。プロジェクトを進めるにあたり、誰が最も情熱を持っているのかを見極めることが大事だ。その人の思いやビジョンを形にするために、規律が生まれる。全員が意見を出しすぎると、自由が混乱を生み、何も実現しないことがある。だからこそ、誰がリーダーシップを持つべきかを自由に選ぶプロセスが大切であり、リーダーが決まったら規律が必要となる。その規律は、周囲からの支援や安心感とともに、個々の情熱を引き出すための枠組みを提供する。

このプロセスを具体化する場として、僕はピコタウンという空間を運営している。しかし、ピコタウンにも「場所の制約」が存在する。ピコタウンは僕の場所であり、他者が完全に自由にそのイメージを実現できるわけではない。この制約が、やがて「自分の場所を持ちたい」というモチベーションに繋がることを期待している。最初はピコタウンで様々なサポートを受けながら活動し、やがて自分自身の自由を追求するための新しい場所を作りたいと思うようになる。これこそが、僕が目指す支援の形だ。

支援のプロセスは、まず「ソフトの部分」から始まる。音楽をやりたい、料理を作って提供したい、飲む場所が欲しい、といった様々な活動をイベント的にサポートする。そして、それが成熟し、次の段階に進んだ時には「ハードの支援」、つまり空間の提供や経営的なサポートが必要になる。このプロセスでは、資金や時間の不足などの矛盾が必然的に発生するが、これを解決することこそが設計の核心だと思う。単なる空間作りではなく、様々な制約や矛盾を解決するプロセスが、僕にとっての設計であり、建築だと感じている。

エリアアーキテクトの役割は、物理的な空間をデザインするだけではなく、人々の情熱を引き出し、その実現をサポートすることだ。自由と規律、ソフトとハードのバランスを取りながら、地域やコミュニティに根ざした空間を創り上げる。このプロセスこそが、エリアアーキテクトとしての僕の設計思想だ。

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