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展覧会レクチャーより(その2)

さてさて、前回の続きです。
『第二章……中国陶磁への憧れの中で』
見出しの写真左下のすっきりしたラインの緑釉陶器、こちらは、当時の貴族が一般的に使用していた『唾壺』(だこ、と読みます)文字どおり唾を呑み込まずに、吐き出すという習慣がありましたので、そのために常に手元にあったらしいです。(正倉院展でも、瑠璃硝子製唾壺、ありましたね。)こちらも、中国製のオリジナル、『原始青磁』と、『白磁』、それと国産品を並べて比較出来るようになっています。
その他にも手付瓶のオリジナル(注ぎ口がついている)と、国産品のデザインの遷移や、展示室入口にもあった四足壺のオリジナルと国産品、こちらは、明らかに大型化したのがわかります。しかも重要文化財の四足壺まで‼️織田有楽斎旧藏の銘品です。
そしてまた、デザインの変遷というのを追う展示として、陰刻花文皿のオリジナルと国産の比較展示も続きます。陰刻という技法は、素地を作成して、完全に乾燥する前に先端の尖った道具を使用して直接彫り込むモノですから、職人の手技と息吹を感じることが出来ます。(作陶体験していただくと、更に職人のテクニックの凄みが身に沁みて実感出来ます。)←自分のセンスのなさにガックリしたクチ(笑)こちらの陰刻花文皿は、猿投窯でも多く出土していますので、二階常設展示でも観ることが出来ます。
第三章『施釉陶器のさまざまな変容』
こちらの展示では、平安中期以降全国各地に広く普及した仏教寺院の祭祀で用いられ、寺院跡地などから多く発見されている、仏具として使用された陶器を同じくオリジナルとなる金属器と共に展示しています。奈良国立博物館所蔵の「金銅火舎」の展示がありますので、当時の人々が憧れた中国大陸の技術力を目の当たりにすることが出来ます。この時代、これらの仏具は釉薬を施さずにあえて質素に無釉の器を使っているのが特徴です。仏具だけでなく、日常の器からも何故か釉薬が使われなくなっていきます。
その一方で大陸から伝来した浄瓶という仏具が国産オリジナルの金属器として布薩型という形式に変化し、国産品を国産陶器製で模倣していくという新たな動きも見られます。

第四章『末法の世の中で』
平安時代末期になってくると、いわゆる仏教的な「末法の世」という時代に突入し、各地で経典を地面に埋めて後世にお釈迦様の教えを遺していこうという『経塚』の造営が盛んに行われるようになります。貴族など財力のある者が、経典を作らせ、それを納めるための金属製の経筒と、さらにその経筒を収納して土中に埋設するために、『経筒外容器』という特殊な用途の陶器製の器を窯業地に作らせました。経筒外容器は基本的には中空の筒状をしており、大抵は蓋が付随して出土しています。なかには、壺を転用して、蓋の代わりに平皿をかぶせてあったり、五輪の塔の形を象った物や、外側に一族郎党の名前を彫り込んだ物まで。様々な外容器のバリエーションを並べて比較することで、当時の貴族階級の人々がどれほどの思いを抱いていたのか、末法の世という思想がどれだけ恐れられ、受け入れられていたのかがわかります。第一展示室出口のケース内にはそうした経筒外容器の中でも最大級のものが展示されています。外側にぐるりと一周一族の名前や役職などの銘文を彫り込んだ容器は、、標高1394mの山頂からの出土品で、重量もかなりのものです。それを山頂に運ばせるというのを可能とする権力、財力がある一族があったというのも作品から知ることが出来るのです

エピローグ『新時代への接点』

さてと、長々と語り尽くしましたが、ソロソロ平安の時代も終わりに近づいてまいりました。こちらのエピローグでは、平安から、鎌倉時代へという変遷を追っていきます。
日本国内では、平安末期から鎌倉時代にかけて中国の白磁、青白磁の伝来から、その形に憧れ、近づこうと努力していきます。こちらのケース内でも、中国製の『白磁玉縁碗』から(広東省、福建省、国産品)というように、比較展示をしていますので、行ったり来たり、立ったりしゃがんだりしながら存分に見比べることが出来ます。
同じく次のケース内では『四耳壺』を、中国製品と瀬戸産品、中国製品と、猿投産品というようにそれぞれを並べて観られるようになっています。
そこから国産品の各産地ごとの比較展示、「梅瓶」といわれる形が、日本に伝来して『瓶子』と呼ばれて定着したもの。こちらも中国オリジナルと瀬戸産瓶子との比較展示によって、平安時代のやきものが鎌倉時代に国産、量産化して生活に根付いていく道筋を思い描くことが出来るようになっているのです。

さて、今回もなかなかの見応えある展示内容となりましたね。しかも、常設展示室に上がれば、平安時代のその先に、連綿と続いていく日本の焼き物の歴史が手に取るように楽しめます。(実際に触れるハンズオンレプリカなんてものもあったりして。)
さあ、平安の昔に思いを馳せに、来ませんか。

最後までお読みいただきありがとうございました。これの数倍面白いギャラリートークも会期中予定しております。

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