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後悔と最適解

高校生の時、部活の後輩の男子から「同級生との話題で盛り上がれない」という相談を受けた。
剽軽で人当たりもいい彼はいつも楽しそうに見えたから驚いた。明るい性格に見えるけど根は暗くて元気に振る舞うことに疲れているのだろうか、とも思った。全然違った。

「女子に点数をつけるのが辛い」という話だった。
運動部あるあるかのか高校生あるあるなのかは分からないが、コミュニケーションの一環としてクラス(周り)の女子に点数をつけて盛り上がることがあるのは私も知っていた。
現に部活終わりに部室に行くとそういう話をしているところに出会したこともある。
ただ彼は「あまりそういうことに興味がないし申し訳ないから楽しめない。でも話に参加しないとつまらないやつだと思われそうでその勇気もない」と言っていた。

当時高校2年生の私は正直困惑した。
率直に何と返せばいいか全く分からなかったからだ。
人の容姿に点数をつけることは褒められることではないことを理解している人に対して「それは良くないことだよ」と言うのは筋違いだ。しかし、仮に「そういうことはやめなよ」と言って彼らの仲が険悪になっても私は責任を取れない。まあ女子同士でも言葉にせずとも可愛い子・目立つ子と普通の子・可愛くはない子との間に線が引かれるし、私が聖人君子のように間違いを諭す立場でもないとも思った。
結局「そういう話題になったら乗らずに適当に流してみたら?」とかなんとか言った気がする。
かわすことが処世術の一つとして正解なのかもしれないけど、私も答えながら「そういうことだけどそういうことじゃないよなあ」とモヤモヤが伝染した。

彼は私たちが高3になり部活を引退してすぐに部活を辞めた。受験勉強に集中したいと言っていた。卒業式で渡された寄せ書きには「先輩だけど姉のような存在で心の頼りだった。」と書かれていた。嬉しかったけどなんだか申し訳なかった。
大学4年生になった今でも、あの時何と答えれば彼の気持ちに寄り添えたのかわからない。

ラジオの悩み相談で高校1年生の女の子から寄せられた似たような悩みが紹介されていた。
5歳以上違ってもそういう文化はあまり変わらないものなんだなと少し悲しくなりながら、ふと彼のことを思い出した。


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