雲ゐ省三

雲ゐ省三

最近の記事

『ヒルビリー・エレジー』J・D・ヴァンス

本書は以前私が紹介したこともあるTEDでスピーチをしていたJ・D・ヴァンス(James David Vance)氏の自伝本である。彼がトランプの元で副大統領候補になっていたのは正直驚きだったが、クマのようなヒゲ面のオッサンになってたことは、まぁ置いておこう。 本書は私のような氷河期世代にグサグサ刺さる内容だ。ネットの書き込みなど2~3%に過ぎないと言われるが、昨今の貧しさはやや度を越しているせいか不平不満が異様に高まりつつあると感じるのは私だけだろうか。 「自分の人生が上手く

    • 映画『骨を掘る男』、第七藝術劇場、雑誌Big Issue

      7月初旬、クソ熱い中、十三まで足を運ぶ。 映画館にいくなぞ数十年前にインデペンデンスデイに行ったキリである。内閣総辞職ビーム良いよね。 ともかく十三にある第七藝術劇場という映画館、通称ナナゲイらしい。周りに無料案内書があったりする怪しい場所にある。なぜか横にボーリング場がある。 この映画館を知ったのもごく最近だが、ドキュメンタリー映画を中心に上映しているらしい。10分に一回の爆破とかカーチェイスなど見れないだろう。そういう主旨なのですよと運営の主張を感じる。 この映画、『骨

      • デモは「善意の道は悪意で舗装されているのか?」の夢を見るか

        デモに行ってきた。 2024年3月だが何度か行われたデモはツイッターではアホかバカかと叩かれまくる訳なのだが、それなりに近いというのもあったからだ。 まぁソーニャがドゥーニャに送った手紙の如く、なるべく事実だけを書いてみよう。後半は私の個人的な恨み言なので見なくていい。 時間。 夕方5時過ぎから歩き始め、到着は6時15分頃。約1時間のゆっくり歩き。日が暮れ寒さが増した。トイレは先に済ましておいた方がいいだろう。 場所。 とある公園から開始。終了後「トークイベント」という

        • 反知性主義者の大阪散歩 法善寺、生魂神社

          昨今オーバーツーリズムらしいということで道頓堀から。思うんですが、オーバーツーリズムを中国人は帰れというヘイトスピーチに利用してる人は何なんですかね。まぁ外国人がそれなりにいるわけですが、別にゴミの山とかそういうほどでもありません。むしろもっと消費しまくってくれというくらいじゃないでしょうか。 別に道頓堀といって何がある訳じゃありません。帰ろうかと思いましたが思い付きで法善寺へ。数組の日本人中年夫婦がいますが、基本は外国人しかいない。寺というには狭すぎてどこか寺なのか疑いた

          『累犯障害者』『響きと怒り』

          まず私は山本譲司の「獄窓記」を読もうとしたのだが図書館になく、代わりに読んだ。なぜ「獄窓記」を読もうかと思ったかと言うと、自分の生活がまるで刑務所にいるかのようなものだからだ。「死の家の記録」「イワン・デニーソヴィチの一日」「俘虜記」とかを読むのもそういう事だからだ。ぬくぬくと明るく楽しい人生を送ってる人は読まなくていい。 「アブラムシの浮いた実のないシチュー」いいよね。 著者は恐らく政治闘争で負けたから投獄されたのだろうが、そしてむしろそっちの方が興味をそそるわけだけど、

          『累犯障害者』『響きと怒り』

          フィリップ・K・ディック 歴戦の勇士 変種第二号

          この短編は1955年に書かれたという。 彼を含め50年代にエイリアンもの、SFものが大量に書かれたのは有名な話で映画も数十本公開されたという。いうまでもなく、ソ連を仮想敵としたプロパガンダ政策の一貫である。得体のしれない敵――イワン、そんな不安を煽るために。 そんな中、彼もソ連をエイリアンに仕立てたSFものを多数書いているわけだが、私は元々、このタイトルの「変種第二号」が読みたくて借りた。 映画にもなったのだが原作はそのままアメリカとソ連の戦争として描かれている。まぁこの話

          フィリップ・K・ディック 歴戦の勇士 変種第二号

          万葉集 第7巻 我が背子を

          我が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに寝しく今し悔しも 何も書いていないし何も書けなくなったが、勢いで書いてみる。 ふと寄った古本屋で万葉集があったが、擬古文で読みづらいと思い買わなかった。 上下巻で上巻の最後がこれだったのでメモ代わりに書く。 字面を噛みしめて読むのが古典なのだろうがリテラシーの著しく低い私にはこれだけでは無論、分からない。 どうやら夫婦喧嘩したらしく夫、或いは男と背中合わせに寝ているのを思い出しているらしい。なぜケンカしたかは分からない。しかし死んだ

          万葉集 第7巻 我が背子を

          菊と刀

          兵士は消耗品 自由と平等を信じない 民主制を受け入れると思わない フランス革命と正反対 悪の概念がない 浮気は妻個人の問題 恩は借金 幸福を追求する気がない この本を私は図書館で借りたのだが、出てきたのはなぜか対訳版という、そして簡訳版というなんだか胡散臭いものだと言っておく。 ざっと読んでいてもかなり厳しい言葉が並んでいる。私は本書の評価をネットで見たりしないが、反感を買ってるだろうなとは想像できる。多分、間違ってるとかアメリカだって侵略してるとかそういう筋違いな反論だろ

          「名前のない女たち」、社会構造

          「あなたは、この種の遊びが大ていは病院で終わるっていうことを知らなくてはいけませんよ」 サガン、悲しみよこんにちは p57 ※本書を紹介するに衝撃的な引用をします。ご注意ください。 私はオレンジ通信とかいうエロ本を知らなかった。多分、でらべっぴん的な奴だろう。グラビアの隙間記事にしては相当深刻な内容である。 90年ごろからブルセラだとか言われてた、薄っすらとそんな記憶はある。テレクラ円交と言われた2000年から20年後、パパ活とか何とか…今も何も変わらない。いきなり余談だ

          「名前のない女たち」、社会構造

          抑留のハナシ「和子の満州抑留記」中井和子

          抑留と言うとシベリアが思い浮かぶ、、、という人も今は少ないだろう。少なくとも私は抑留について誰かと喋ったこともないし喋ろうとも思わない。かと言って大上段から「日本の過去を残しておきたい」という気概もへったくれもない。しかし時折私の関心はこの事に向かう。なぜだかは説明しない。 実の所、この本を紹介するか迷った。 ハッキリ言うとステマでもあるし当然私には何のメリットもないが、かといって私の独断の話しを公に書くことで迷惑がかかるかもしれないからである。 ――というくだらない言い訳

          抑留のハナシ「和子の満州抑留記」中井和子

          反知性主義者の大阪人の散歩 その2「愛染保育園と石井十次」

          大阪は日本でも特に反知性主義の群れである。 文化と言えるものが何もない。心斎橋のような今どきの通りは大資本に侵略と略奪に蹂躙されるままでどこの都市でもあるようなテンプレ通りであり、新世界などは串カツまみれで道頓堀はシャツ姿の男が無様に照らし出されているという地獄のような街である。デカいカニやフグなど勘弁して欲しいと素で思っている。 最近、文化資本という言葉をチラホラ耳にする。これは教育格差とか親ガチャという言葉と混ざり合いイヤなニュアンスを含んでいるけれど、単なる懐古趣味や通

          反知性主義者の大阪人の散歩 その2「愛染保育園と石井十次」

          反知性主義者の大阪人の散歩 その1「生きては出られぬ飛田新地」

          私は大阪人ではあるが関東にいたせいで大阪を実の所知らない。またよくある風俗レポとかそういう類のものをあまり好まない。だからこれは単なる感傷的な雑記である。 飛田新地は知る人は知る、知らない人はまったく知らない風俗街である。昨年12月、つまり2021年12月、かんなみ新地が一掃されたというニュースも知らなかった。一体どういう共通項からかは知らないが「新地」という言い方をするようだ。 ともかく書いていこう。 まず地下鉄堺筋線という南北に貫く地下鉄で動物園前で下車。そしていきな

          反知性主義者の大阪人の散歩 その1「生きては出られぬ飛田新地」

          死の家の記録

          胴枯れ病を知ってるだろうか。 どうしても感想を書きたいので4回目のチャレンジである。 そのドストエフスキーが投獄されたペトラシェフスキー事件を調べると当然フランス革命に行き着く。そもこの革命は庶民がパンを食えないという余りにも素朴で単純でしかもクリティカル(致命的)な事由に端を発する。ジャガイモを枯らしたのが胴枯れ病だそうだ。アメリカにアイルランド移民が多いのはジャガイモ飢饉で多くの人が死から逃れるためにアメリカに移住したのが発端である。 ルソーが現れ人権について説き、共

          死の家の記録

          82年生まれキムジヨン

          本書についていくつか感想を書いてみたのだが、どうにもしっくりこない。 実の所、私にとってオンナはウザいものでしかない。愛想悪いしツンツンしてるし、何より人を顔しか見ないクソな存在である。彼女らの言う「良い人」というのはどうでも「良い人」都合の「良い人」でしかなく、まともに評価されたことなぞ一度もない。だから嫌いなのである。 またこの本についても数多の感想があるだろうし、――まあそれを読んでもいないのだが、女性の地位が低いとかガラスの天井とかそういう話が大半だと思う。 こうい

          82年生まれキムジヨン

          自民党―「一強」の実像

          そもそも自民党は、新たな選挙制度の下で実地された1996年の総選挙以降、低い投票率に助けられてきた。1980年代に比べて、自民党の絶対得票率は大幅に低下しているが、相対得票率でみると、あまり低くなっていないのは、投票率の低下ゆえである。 (中略) しかし、自民党の強さは盤石なものではない。しかし、非自民勢力が結束した上で無党派層を動員できない限り、自民党の優位は崩れない。 p144 私が本書を読んだのは2021年8月、世間が五輪で騒いでいたころである。そして時折、「支持率3

          自民党―「一強」の実像

          黒い雨と白骨の御文章

          茸型の雲は、茸よりもクラゲに似た形であった。しかし、クラゲよりもまだ動物的な活力があるかのように脚を振るわせて、赤、紫、藍、緑と、クラゲの頭の色を変えながら、東南に向けて蔓延っていく。ぐらぐらと煮えくり返る湯のように、中から中から湧きだしながら、猛り狂って今にも襲いかぶさって来るようである。蒙古高句麗の雲とはよく云い得たものだ。 中略 「おおいムクリコクリの雲、もう往んでくれえ、わしら非戦闘員じゃあ、おおい、もう往んでくれえ」と繰り返して金切り声を上げる女がいた。 キノコ雲

          黒い雨と白骨の御文章