5/3-掌編小説 ぼくの仕事
親友以上、恋人以上の他人、この世の悩める人たちの親愛なる他人、そんな一人になりたいの。取るに足らないみんな見て見ぬ振りしてる、気づかないふりを極めればなにも感じなくなってしまうような小さな小さな悩みを山積みにして山だらけな社会で生きることを強いられているぼくらの親身になって一緒にいてくれる他人。
悩みとはね、切り捨ててもダメだし、そのままにしてもダメだし、そのまま呑み込んでもダメなんだよ、適切に力を加えて美味しくして、甘くしてからいただくのが普通だから、そうできるように、一人じゃ悩み切れないときに一緒にいてあげる他人、ぼくのこの頼りなさが重要なポイントだと思う、自分が頑張らなきゃいけないんだってことを教えてあげることがぼくの役目だからね。
悩みに呑み込まれてはダメなんだけど、一人で悩んでいると悩みに呑み込まれそうになるから、ぼくが一緒にいてあげる。悩みは自分の隣にあって、それを掴んで、全方位からがっつり見てから、どうしたもんかと思考を巡らすのがいいよ。大抵は、よく見てあげたら、すぐ消えるんだよね、意外にも。こっちを見てほしくて、うずいてただけだったのかも、ちょっと見てあげたら、溶けていくような、小さなつかえがあっただけだったってことは、よくあること、一人じゃ気づけなかったこと、ぼくがいたら簡単に気づけるようになるかもしれないから、それがぼくの仕事。なのに、無気力が、襲ってくるの。
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