難しい話

 大人とは、子どもが何かをしたら怒る生き物、ぼくにはそんなふうに見えていた。何をしたかは関係なく、何かをしたら怒る、それが大人という生き物だった。子どもが何かをしたら、大人がうるさくなるから、大人がうるさくならないように、ぼくは何もしなかった、何もしないで観察していた、ぼくの目に映るすべてを、目を凝らして見ていた。大人に期待されている子どもは期待に応えなければ怒られるゆえ、何もしないわけにはいかないが、大人に期待されていない子どもは何もしなくても怒られない、静かにしているだけで良い子扱いとなり、ぼくは限りなく自由だった、静かにしておく才能のあるぼくは大人の視界に入らないのだった。

観察を続けてきてわかったことは、
大人は子どもの仕事を奪い、
子どもは大人を甘やかし、
いかれた仕事を与え続け、本来の仕事へ向かわせず、奪われたまま生きることを強いているということだ。

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かえるのひかり(なるせ)
行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。