5/19-掌編 透明
もしもこの涙が真っ赤だったら
ことの重大さが
わかってもらえるのだろうか
ぼくの中の何かがズタズタに引き裂かれているみたいだ
涙が溢れてくるんだ
わかっているさ、涙が透明じゃなかったら
あまりにグロテスクで
病人扱いになり
薬漬けだ
ぼくはもう消されている
はてさて、ぼくがいなくなっていれば、どれほど楽だったろうか
いやはや、それでは、そこにある幸せも喜びも偽りであったろう
儚く消える夢物語と、ぼくらの見なければならない現実を履き違えているのはあなたではないのか
行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。