奇跡は起こらない

父が亡くなる2週間ほど前から私も病院で泊まり込みを始めました。

大好きな大尊敬する父でしたので、

泊まり込みは望むところでしたが、

日々重症化していき

変化していく父を見続けることは想像していた以上に辛かったです。

食べられない父を前に私も食べられなくなり、

わたしも一緒にいなくなりたい。そんな気持ちになることもありました。

そして朝が来ると、正確に言うと寝る前に、

毎日自然に湧き上がってくる思いがありました。

それは

『あした目が覚めると奇跡が起こって、

にこにこ笑っているいつもの父がいるのではないか』と。

時に死からの生還

奇跡の回復

など…

今まで軽く目にしただけの言葉が

この場この時期になって次から次へと浮かんでくるのです。


でも、奇跡は起こりませんでした。




奇跡は起こらないのです。

正確に言うと、奇跡が起こせるのは

奇跡を起こす環境、条件があるからこそなんだと。

改めて思いました。

さらに言うならその奇跡を起こす環境や条件も必然なのではないかと。


父はまるで紙ひこうきのようでした。

時に上昇気流にのって、

ふわりと上空に浮かぶこともありました。

けれどたどり着く場所、着地点を探しているのは明らかでした。

着地点=死を目指して生きている

そこを見守り続け見届けるのは

本人もそうだったのでしょうが

家族にとっても

とても辛いことだったのです。

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