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詩| 最後の声はたぶん優しかった

最後の声を覚えていますか
それはどんな声でしたか

最後に交わした声とその表情を
いつまでも記憶にとどめておくことはできなくて

こうして夕陽を見ながら思い出すあの時の声は
少しずつ 自分にとって良い記憶にしようとして。
そうして 違っていたことに絶望して。
冷めていく珈琲のように
思い出は ただの記憶として成り代わっていく

最後の声を覚えていますか
最後に交わしたあの声を。
それはどんな声でしたか
あなたへ向けられたその声は。

あなたの熱はもう覚えていない
優しい子守唄ももう覚えていない
表情ももう忘れかけてしまっている
写真は一枚も残っていない

せめて声だけでも、と
記録媒体を探すけれど
どこにもない
どこにもない


声を覚えていますか
あなたにとってのあの人の声を
最後の声を。
きっと 忘れたくない
たとえ みずか
記憶の彼方に追いやったとしても。

最後の声は
たぶん 優しかった
と 思いたい
事実と違っていたとしても。
優しい記憶として 残したい


あなたの声は たぶん優しかった
そう思いたい



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