![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129460016/rectangle_large_type_2_eb3ea9a610bfd20441a9403bfd6134a7.png?width=1200)
【感情紀行記】妖怪筆回し
この数日間、多くの妖怪を発見した。この妖怪たちの共通点というのは自分のことしか見えておらず、周りに迷惑をかけているところである。こういうのは一度見つけてしまうとどんどんと気になってしまう性分なので、かなり迷惑する。
一つ目は、大学の講義中の100分間、永遠とペン回しをし続けていた妖怪である。ペン回しをしていないと落ち着かないのかも知れないが、とにかく下手で、1分に一回、いや、それよりももっとかも知れないが、その手で回しているペンを落とすのだ。ペンを落とすたびに、ガチャンと音がして、再びペンが回り始める。何度も何度も繰り返されるその行為から目を背けようとしても、聴覚からその情報が嫌でも入ってきてしまう。時には、その回しているペンが遠くに飛んでしまった時もあり、もう頭を抱えるしかなかった。
次の妖怪は、同じ講義中に現れた、スライド撮影妖怪である。なぜなのかは知らないが、スライドに動きがあるたびに、スマホでカシャという音を鳴らしながら撮影をするのだ。スライドに動きがあるといのは、スライドが次のスライドに変更した時などではなく、スライドの文字が動いたり、色が変わったり、文字が追加される度にということだ。果たして、彼は集めた画像でスライドのパラパラ漫画でも作るつもりなのであろうか。せめてシャッター音をなくせるアプリでも使って欲しいものだ。
左には妖怪筆回し、前にはスライド撮影妖怪。散々な講義となった。そんな講義を終え、アルバイトのために、電車へと乗った。すると、電車の真ん中で何か吊り革を下げるための鉄棒に捕まっているおじさんがいたのだ。妖怪通せんぼ、である。どうやら、そのおじさんは腰だか肩だかの身体に不調をきたしているようで、その鉄棒を使って体操をしていたようである。迷惑そうに車内を移動する人にも目をくれず、混雑し始める車内でその人が駅を降りるまで体操は続いた。中には車両の移動の中断を余儀なくされる人が出ており、おじさんの前後には移動を諦めた人々の塊ができていた。
アルバイト先に到着し、そんなことを話していたら、前方から自転車に乗ったおじさんが猛スピードで突入してきた。自転車のベルを常時鳴らしているようなそんな人であった。そもそも、自転車のベルは、道路交通法第54条第2項で「警音器の使用」となり、無闇に鳴らすのは警音器使用制限違反となる。一緒に話しながら歩いていた後輩が「あれ、妖怪じゃないですか。」と言ってきた。確かにそうだ。自分のスピードを理解せず、騒音を鳴り響かせる立派な妖怪である。妖怪研究の良き仲間を育ててしまったようだ。問題は命名だ。猛スピードでこちらに突入してきて、ギリギリのところで避ける、近づくと警報が鳴るということを加味し、妖怪テポドンと名付けた。
妖怪は社会の中の至る所に存在している。これからも社会の解明した古の妖怪たちに光をあて復活させる研究は続けていきたい。自分の周辺で拡大しつつあるこの研究も光を浴びかけている。