【感情紀行記】邁進、前進、腐心
忙しさの極致に達した日常は、過ぎ去ることも忘れるように進んでいく。家族写真の撮影に、自分の人生の節目を記念する日、友人との再会、誰かへのサプライズ、人間関係での問題。現実世界で繰り広げられる課題や問題、感情的揺さぶりは日常を刻む針を止める。
ネットや、非現実世界への没入が簡単なこの世界で、現実を噛み締めてゆっくりと進んでいくのは難しい。すぐに現実逃避し、現実を悲観する。しかし、さまざまなイベントが現実に引き留めた数週間。他の世界を忘れるほど現実世界を楽しんだ。もちろん楽しいことばかりではないが、何かに悩んだり、苦しんだりするのも現実世界での活動を実感させる一節だ。課題に追われ、タスクを処理していることも自分の「生きている」を実感する大事な局面だ。
現実を悲観して逃げるのはいつも、自分の理想を具現化している実際にはみたことのない仮説の切り抜かれたストーリーだ。そんな童話の主人公と社会のモブである現実との自分でまた、「生きている」を感じているのかもしれない。
最近は、そんな童話の主人公の過剰摂取と大量発生に飽き飽きとしていた。そんなことよりも、自分は自分の人生の主人公であることを忘れないことが重要なのだ。世界を救うヒーローでも、社会を風靡する一流スターでもないかもしれない。身近に言えば、寄ってくる人が絶えない人気者でも、煌びやかな経歴を身に纏ったお金持ちでもないかもしれない。しかし、それを見ている自分は揺るぎのない、確固たる自分自身なのである。
そんな大切な主権者である自分を、見窄らしい俯瞰者にさせてしまう非現実世界から距離をおいてみると、多少の時間はかかるものの、現実世界の主人公としての自分を取り戻した。読み手からストーリーテラーへと転身したのだ。誰かの物語をみて羨み批評している暇があったら、自分の面白い話を作っていた方がよっぽど幸せだ。