ラ・キウヴァ社訪問
【La Kiuva ラ・キウヴァ】
このワイナリーは、イタリアのスイス・フランス国境ヴァッレ・ダオスタ州のアルナという場所にあります。
アルナは、Paese del Lardo”ラルドの国”と書かれた、白い生ハムのラルドが特産の街です。
日本で大変お世話になっている仙石さんにご紹介いただきました。
ラ・キウヴァ社は、約50人の生産者が集まった協同組合のワイナリーです。
高い山々に囲まれ、牛の放牧場があり、小さな葡萄畑や野菜の畑があちらこちらにある坂道を登ったところに、レストランとワイナリーが併設されたラ・キウヴァの建物があります。
ワイナリーを案内をしてくださったイヴォさんは
カッチャトーラ(猟師)でもあり、ワイン造りの他にもイノシシや牛の解体場も見せていただきました。
ワインの試飲をしながら、イヴォさんが仕留めたイノシシや特産品のラルドダルナや栗などをごちそうになりました。特にハチミツ入りのグラッパKiu Mielキウミエールは、千の花の蜂蜜と栗の花の蜂蜜をブレンドしているグラッパで、上品な蜜の香りと自然な甘さでとろりとする濃密な味わいです。
試飲後に畑を案内してくれたのは、この土地で生まれ育った60歳のクレートさんと愛犬のピッポです。
葡萄畑以外にも、1800年代のパンを焼いていた場所や、昔のカンティーナ、野菜の畑なども見せていただきました。
そして、すごく気になっていた葡萄畑にある石柱のPilunピルン
棚仕立てのTopiaトーピアも説明もしてくださいました。
トーピアという仕立ては、ピエモンテ州のカレーマの地区からヴァッレ・ダオスタ州のドンナス、そしてこのアルナの街まで続く伝統的な手法で、約2000年前のローマ時代にはあったといわれる、ものすごく古い仕立てです。
畑にゴロゴロと転がっていた石を集めて、石垣や石柱を作り、棚仕立てに葡萄をつくります。
この石達が、日中の太陽光を浴びて蓄熱し、夜の氷点下まで下がる寒さから葡萄を守ります。
さらに、動物達が葡萄を食べてしまうことを防ぐ目的もあるそうです。
ちなみに葡萄を食べてしまう動物は、鳥やイノシシ、鹿などですが、1番出現するのはアナグマだそうです。
カレーマでは、1960年にこのトーピアの伝統製法を守る協同組合ができ、ドンナスも大きく取り組んでいますが、ここアルナでは、だいぶ少しだけになりグイヨーになっているそうです。ただ石柱は残っているので、畑の周りを石柱が囲み、仕立てはトーピアではなくグイヨーといった具合です。
土壌は、モレーン(氷堆積土)をベースに石と砂が多く、石灰の白い色をしていました。カレーマと同じですか?と聞いたところ、土の酸度が違うので、カレーマとの土壌とは全然違うとおっしゃっていました。
ラ・キウヴァ社は、珍しい葡萄品種も残っており、
Grox VeienとNerettoという名前のものがあります。
Gros Veien
(発音は何回聞いても、ゴーヴィエンに聞こえました)は、フィロキセラ後、ピエモンテからやってきたアオスタの品種だそうです。Grosは、Grossoの意味で房や粒が大きくたくさんの収量が見込めるという意味で、Veienは他の地域でいうVernaccia(その土地の葡萄)という意味だそうです。
香りや味わいは、かなりシンプルですが、収量が多く農民にはすごく重宝された品種で、現在はかなり少なくなっているそうです。
Neretto
ネーロ(黒色)からきている葡萄品種で、色がしっかりと出る品種だそうです。ゴーヴィエンでワインの収量を増やして、ネーレットで色を補填するということだそうです。
キアンティ地区の白葡萄やコロリーノの関係のようだと思いました。
葡萄畑以外にも、小さな生産者のミルクを持ち寄る場所や、ジビエの解体場や、機械が無かった時代のカンティーナや、小さな家の奥の熟成庫などを見せていただき思ったことは、昔からこの土地の方々がお互いに協力をしあって生き抜いてきた歴史があるということです。
ラ・キウヴァという言葉は、山羊さんの冬のご飯となる葉っぱが積み重なった山のことを指すこの土地の言葉です。
小さな生産者が葉っぱの束のように集まり、パートナーとしての絆を大切にし、誓い合うという意味が込められているそうです。
この造り手が、そこにある存在意義や理由が伝わる素敵な名前だと思いました。
マジカメンテでは、ラ・キウヴァ社のアルナモンジョヴェとキウミエールの2種類を取り扱いをしております。
ややマニアックな地域と葡萄ですが、是非味わってみてください。
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